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「『百寿者』と呼ばれる100歳以上の人たちが長生きできるのは、特殊な長寿遺伝子があるためとは限りません。寿命に対し遺伝が関連しているのは25%ほど。残りは環境的要因が占めます。特に50代以降の生活習慣が大きく影響します」

 

そう語るのは、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通教授だ。百寿総合研究センターでは、30年以上にわたって全国各地の100歳以上の人たちを訪ね歩いて健康状態を調査してきた。「オーバー100」の992人の調査から、“長寿の秘密”がわかってきた。新井教授が解説する。

 

「ふだんから運動を心がけることはもちろん、100歳に到達するまでに年代に見合った食生活や生活習慣の改善を行い、柔軟に対応することで、衰えにくい心身を作っているようです」

 

現時点の体調で健康を考えるだけでなく、10年後、20年後にはどのような“壁”が立ちはだかるのかを知り、それらに備えていくことが健康長寿のためには重要なのだ。50代、60代で心がけたいのが、血管の老化対策だ。

 

「百寿者の血液検査では、100歳以上の人の血管は、実年齢より20歳ほど若い状態を保ち、血管の老化現象である動脈硬化が起こりにくいことが判明。体のすみずみまで酸素と栄養を運ぶ血管の若々しさを保つことで、心臓の働きが衰えず、腎臓などの機能低下も起こりにくくなるのです」(新井教授・以下同)

 

50代から進行していく動脈硬化は、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる病気の引き金になる。

 

「動脈硬化の危険性が高いのは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧の人や喫煙者です。女性の場合は、閉経後に血管を老化から守る女性ホルモン『エストロゲン』が減少し、動脈硬化のリスクが高まります。50、60代は、腹八分目を心がけ、中性脂肪が増えすぎないようにしたいです」

 

75歳以上では肉類、魚介類、大豆製品など良質なタンパク質をしっかり摂取して、骨格筋の機能を維持することもポイントに。新井教授が特に注目しているのが、青魚に多く含まれる「EPA」と「DHA」だという。

 

「EPAやDHAの摂取量が多い人は歩行機能がよく保たれていることがわかっています。骨がもろくなる『骨粗しょう症』や『膝関節炎』などは骨折リスクが高まったり、外出の機会が減るなどして身体活動の減少につながります。中性脂肪を抑えて血管の老化を防ぐだけでなく、抗酸化作用によって認知機能維持の効果も期待できるEPAとDHAは、どの年代でも積極的に取りたい栄養素です」

 

100歳以上の人と対面して調査をしてきた新井教授は、長寿者には“性格”にも共通点があるという。

 

「社交的、好奇心旺盛、そして誠実な人が多いです。100歳にもなると、まわりには同世代の友人はなかなかいません。そこで孤立するのではなく、年下の人とも交流ができ、そこから新しいことをどんどん吸収できる姿勢は健康長寿を支える要素の一つなのでしょう。社会とのつながりを維持し、アクティブに暮らすことはフレイル予防にもなります。また、人との会話の機会が生まれることで、脳が活性化し、認知症の予防にもなるのです」

 

健康長寿をかなえるまでに立ちはだかるさまざまな壁。その傾向と対策を押さえて、人生100年時代をしなやかに過ごしていこう。

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