「来年の3月まで、新型コロナとインフルエンザの流行が発生する可能性が極めて高い」
10月21日、閣議後の記者会見で、加藤勝信厚生労働大臣はこう発言した。 昭和大学医学部の二木芳人客員教授(臨床感染症学)が解説する。
「新型コロナウイルスの流行が始まって2シーズン、世界的にインフルエンザの流行は低水準でした。ところが今シーズンは、日本より一足早く冬を迎えたオーストラリアで、インフルエンザがコロナ拡大前と同じ程度に流行しました。2年あまり日本でインフルエンザの流行がなかったことから、インフルエンザの免疫を獲得している人の割合が少ない。そのうえ、水際対策が大幅に緩和され、海外からの旅行者が増えるなか、日本でもインフルエンザの流行が広がることが危惧されているのです」
現在は新規感染者数の横ばいが続いている新型コロナウイルスだが、こちらも冬から第8波の流行が起きると予測されている。この冬、ピーク時には全国で新型コロナ感染者が45万人、インフルエンザ感染者が30万人と、合わせて75万人の感染者が出るケースを政府は想定しているのだ。2つの感染症の同時流行“ツインデミック”が現実味を帯びるなか、もっとも懸念されるのが新型コロナとインフルエンザの2種類のウイルスに同時に感染する“フルロナ”だ。そもそも、2つのウイルスに同時に感染するということはありうるのだろうか? 二木教授が語る。
「通常、ヒトが1つのウイルスに感染すると、別のウイルスには感染しにくくなる『ウイルス干渉』という現象が起きます。ところが新型コロナとインフルエンザのウイルスでは、ウイルス干渉が起こらずに、両方に感染する事例がアメリカやブラジル、イスラエルなどで報告されています」
気がかりなのが、フルロナになってしまった場合、重症化リスクが高まることだという。重症化が懸念される症状の一つが、肺へのダメージだ。
「肺炎では、インフルエンザでは二次感染型肺炎、新型コロナでは肺の中でウイルスが増殖するウイルス性肺炎をそれぞれ起こすリスクがあり、単独感染よりも同時感染のほうが重症化しやすいことが考えられます」