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静岡県裾野市の「さくら保育園」で起きた、園児虐待で3名の保育士が逮捕された暴行事件。

 

この事件を皮切りに、各地の保育園での不適切保育が発覚している。なかには保育士による「早く人間になれ!」といった唖然とする暴言も飛び出した。それらのあまりに酷い虐待行為や暴言が大きな反響を呼び、社会問題となっている。

 

保育園での虐待の連鎖を食い止めるには、保育士が置かれている環境改善も不可欠である。それにはまず、保育士の人員配置基準を見直すのが急務であると、豊富な取材実績と現場感覚をもとに話題作『誰かたすけて~止まらない児童虐待』(リーダーズノート)『ルポ 居所不明児童 ――消えた子どもたち』(中央公論新社)など子供の虐待問題の著作も多い、ジャーナリストの石川結貴氏は語気を強める。

 

現状では0歳児3名に対して保育士1名、1~2歳児6名に対して1名、3歳児20名に対して1名、4歳児30名に対して1名という配置基準となっているが、明らかにこの基準で適切な保育環境を確保することは不可能である、と石川氏は指摘する。

 

「保育の現場では圧倒的に人手が足りないのが現状で、さくら保育園でも、手が足りない分を派遣やパートなどでカバーしていたわけです。人手不足に悩む保育園では、面接の段階で『この人はちょっと…』と採用をためらう印象の人でも、ほかに応募者がいない場合、配置基準を満たすためやむなく雇うこともある。そのうえ、1人でも辞められては現場が回らなくなるということから、たとえ内部告発があったとしても、すぐに問題の保育士を処分することができない。そのため迅速な対応を怠り、『臭いものに蓋』をせざるを得ないような背景があります」
それだけ保育の現場では人材確保が困難になっているのだと石川氏は話す。

 

「これはやはり保育をとりまく国の政策上の問題点が大きな原因でもあります。良い人材を確保するためには、休暇をとりやすくしたり、低賃金を見直すなど、待遇改善が急務です。

 

保育に限らず、学校教育や進学のための奨学金の拡充など、政治はもっと子どもに関連する予算を増やしてほしいです。防衛費は莫大な予算をつけるのに対し、少子高齢化対策の要である子育ての予算については先送りされている。確かに防衛費も大切かもしれませんが、国土を防衛する『人』が減ってしまっては真に未来は明るくありません。また経済や社会保障の面からも、少子高齢化はとても深刻な問題です。まず優先すべき課題は何か、私たちはもっと声を上げて関心を寄せていくことが大切だと思います」

 

政府は12月23日、23年度予算案を閣議決定。防衛費の歴史的増額により、11年連続で過去最大、114億円の予算案となっている。これに対し、少子化対策では妊産婦に10万円を配る事業の経費を盛り込んだのみ。財源の議論は23年まで先送りされた――。

 

「所得税や消費税など、私たちはあの手この手で税金を取られていますが、やはりもっと自分たちの払った税金の使途を把握する必要もあると思います。出産育児一時金など、僅かな増額があったといっても、少子化対策はそんなもので済むはずがありません。期待するべきは、もっと長きに渡り子どもを育てていける手厚い政策でなくてはならないと思います」

 

国民の声が政府に届くのはいつか――。

 

(その3へ続く)

出典元:

WEB女性自身

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