物価の高騰や保険料の負担増などが家計を直撃している(写真:アフロ) 画像を見る

物価の上昇に歯止めがかからないなか、今年は介護保険の負担割合増、後期高齢者の医療保険料の上限額引き上げ、さらには社会保険料のアップなど、家計にダメージをおよぼす制度変更が相次ぐ。

 

「昨年から食料品の値段が急激に上がり、『家計のやりくりが大変』という人たちからの相談が急増しています。節約を心がけても、お給料が上がらないので、どの項目をカットしたらいいかわからない、という声をよく聞きます。今のうちに赤字体質を改善しておかないと、老後の生活に支障をきたすことになりかねません」

 

そう警鐘を鳴らすのは、ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん。政府は物価上昇率を上回る賃上げを企業に要求するものの、収入が上がる家庭は一握りにすぎない。それどころか、50代後半から60代にかけては、収入が“崖”のように段階的に激減する事態が待ち受けている。

 

「最初の“崖”は、55歳ごろ。『部長』『課長』といった役職から外れて、ヒラ社員になる『役職定年』を迎えるときです。役職定年にあたってどのくらい収入が下がるのかは会社によって異なるとはいえ、約2割は下がるといわれています」(黒田さん・以下同)

 

国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、55〜59歳男性の平均給与は687万円。2割減となると549万6千円まで下がる。仮に月収44万円、ボーナス2回で合計180万円もらっていたとすると、役職定年後は月収が36万円、ボーナスは120万円となり、年収は138万円も下がる計算に。いまは生活が苦しいほどではない、という家計でも、この収入ダウンを考慮しておかないと大惨事になりかねないのだ。

 

そして2つ目の“崖”は60歳の「定年退職」のとき。高齢者雇用安定法が施行されたことで、希望者に対しては65歳まで社員を雇用することが企業側に義務づけられているが、多くの企業は60歳定年制を維持したままで、希望する社員に対して再雇用を行っている。現在、60歳の定年時に約75%の人が再雇用を選択しているが、ここでも大幅な年収ダウンは避けられない。労働政策研究・研修機構の調査によると、継続雇用を選択した場合、約4割の人が、定年前と比べ賃金が60%以下になるという。退職前の年収を549万6千円として、そこから40%ダウンすると、220万円ダウンの329万7千円となる。

 

「定年後、再雇用で働くといっても、ボーナスが出ないケースがほとんどです。そのため、毎月の赤字をボーナスで補塡したり、ぜいたくのためにパァッと使うなどしていると、いつまでたってもお金が貯まりません」

 

3つ目の“崖”は65歳。仕事を完全にリタイアし、公的年金が生活費の柱になると、年収はさらに減る。

 

「専業主婦の妻の年金を合わせた世帯での年金収入は、約276万円。50代後半から65歳まで10年足らずの間で、年収は半分以下になってしまうのです。それでおしまいではなく、夫婦どちらかの死別後には年金額がさらに下がります」要注意なのが夫に先立たれた妻のケース。夫の厚生年金の4分の3にあたる額を「遺族厚生年金」として受け取れるが、老齢基礎年金と合わせても月額14万円、年間でも168万円だ。

 

収入ダウンの崖の前にいる人、そして崖の途中にいる人も、今すぐやるべきことは「支出の見直し」だと黒田さんは話す。

 

「年収が減った影響や物価上昇のダメージを埋めるには、毎月の固定費を抑えると効果があります。たとえばスマホ料金。年間で数万円単位のコストカットを達成できるため多くの雑誌で『格安スマホへの乗り換え特集』が掲載されますが、実践する人はほとんどいません。なるべく早く行動に移すことがとても大切です。

 

さらに着手したいのが、いまボーナスで支払っている『特別支出』の見直しです。家電の買い換え費用や家族旅行、自動車税や固定資産税など、夏と冬のボーナスを充てていた項目を書き出し、取捨選択します。必要な分は12等分して、1カ月の予算に振り分けて、毎月の収入内でやりくりできるようにすると、慢性的な赤字体質から抜け出せるようになります」

 

住宅ローンや教育費がまだ残っている人は、退職金で一括返済してしまうと貯蓄が増やせなくなる。自分たちの老後資金のためにもなるべくとっておき、ローンを返済し終えるまでは、夫はフルタイムで、妻もパートで働き続け、できるだけ世帯収入を増やしたい。家計への負担増の波が収まることは期待できそうもないなか、少しでも早く手を打っておこう。

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