「高齢者は、老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」(2021年12月「ABEMA Prime」)
こんな過激な持論を繰り返してきたのは、コメンテーターとしてもすっかりおなじみになった経済学者でイェール大学のアシスタント・プロフェッサーの成田悠輔氏(38)だ。今、こうした成田氏の発言が国内外で注目され、批判を浴びているのだ。
2022年1月にネットで公開された堀江貴文氏らとの座談会では、前述の主張だけではなく、“強制的な安楽死”の必要性にまで言及している。
「優生思想ですね。衆議院議員の杉田水脈さんも『LGBTは生産性がない』と言って批判された。つまり、“生産性”がないから、高齢者や障がい者に価値がないと勝手に決めつける。ナチスと同じ発想です」
そう指摘するのは、社会保障法などを専門としている鹿児島大学の伊藤周平教授だ。ナチスはユダヤ人をはじめとする特定の民族の虐殺だけではなく、精神障害や身体障害のある人々を“強制的な安楽死”させたことでも知られている。
成田氏の主張に厳しい批判が集まる一方で、近年、高齢者を敵視する同様の意見が、若年層の間で広がっているのだ。
《老害たちの社会保障費に、若者の金がとられている。自分勝手な老人が日本をダメにしている》
《寝たきりの老人を延命させるために、若者が犠牲になっている。コロナで死ぬのは寿命だろ》
いずれもネット上で、よく見られる主張だ。
■“政府公認”の高齢者たたき
「深刻な不況のなか、特定の悪者を作ってバッシングすることで、自分たちの責任を転嫁するというのは古くから権力者がやってきた手法です。日本では今、高齢者が敵にされている」
そう指摘するのは経済評論家の森永卓郎さんだ。
「財務省や与党の政治家は、高齢者からの税収は少ないのに、年金や医療などの莫大な社会保障費がかかっているから、財政健全化ができないと言い続けてきました。そのために、増税も必要だし、少子化対策もできないと。そうやって、世代間の対立をあおり、責任転嫁してきた。その一方で、防衛費は大幅に増やすわけです」
成田氏ほど“あからさま”でないものの、こうした高齢者蔑視発言は、与党自民党からも、たびたび発せられてきた。
その急先鋒が、麻生太郎元首相だ。総理大臣時代の2008年、「(同窓会で再会した友人たちが)よぼよぼしている、医者にやたらにかかっている者がいる」と発言。2016年にも、テレビで見た高齢者を例に、「『いつまで生きているつもりだよ』と思った」などと言い放った。
また、自民党の若手のホープ・小泉進次郎元環境大臣も、「(子どもに比べて)あまりにも高齢者を優遇しすぎ」「高齢者に配るお金はあるが、少子化対策のお金はないというのはおかしい」と、雑誌の座談会で発言している。
テレビや新聞では、元官僚や政権に近い言論人が同様の意見を展開。成田氏の発言は、こうした土壌のもとされたものだった。