広がる“高齢者ヘイト”原因は「失政を責任転嫁する政府にある」と専門家
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■「高齢者はコロナで死んでも構わない」

 

一方、岸田首相はどうだろうか。高齢者を含む“全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会を目指す”と所信表明演説で語ってはいたが……。

 

「大手メディアはあまり報じませんが、新型コロナの第8波だけで東日本大震災の死者数を超える2万人超が亡くなっています。その約9割が70代以上の高齢者です。にもかかわらず、岸田政権はなんの対策もとらず、逆に5類への引き下げを決定しました。つまり、実際に政府は、『高齢者は死んでも構わない』という政策を実行しているんです」(森永さん)

 

さらに、政府が進めるのは医療費の削減だ。前出の伊藤さんはこう解説をする。

 

「厚労省はこれまで、人口減少と高齢化を見越して全国で公立・公的病院の統廃合を進め病床を削減してきました。コロナ禍で病床がひっ迫している中でも進めていた。多くの高齢者が入院できずに亡くなったのは、その影響も大きいでしょう」

 

一方で、高齢者の負担はうなぎのぼりだ。昨年10月から、年収200万円以上の後期高齢者の医療費窓口負担が2割に。65歳以上が負担する介護保険料も導入当初から2倍超の月額平均約6千円になっている。さらに2024年度からは、介護保険サービスの利用料の自己負担額が引き上げられる可能性が高い。

 

「安倍政権と違って、岸田首相は財務省の言うことは何でも聞く政権なんです。高齢者の切り捨ては、岸田政権で間違いなく加速していくでしょうね」(森永さん)

 

■日本は高齢者も若者もみな貧しい

 

「そもそも“恵まれた高齢者VS貧困な若者”という図式がまちがっている」と伊藤さんは指摘する。

 

「日本は世界的に見ても、高齢者の貧困率が高い。貯蓄も年金も少ないためです。裕福な高齢者は一握り。実は高齢者も若者も貧困状態にあるのです」

 

OECDの最新のデータによると、高齢者の貧困率はG7の中ではアメリカに次いで2番目に悪い水準。18~65歳も、イタリア、アメリカに続き3番目に悪い。

 

「日本は高齢者人口が多いので社会保障費の全体は多いのですが、1人あたりでみると、先進国のなかでは少ない水準です。そもそも、社会保障にあてると言って上げた消費税の大部分は国の借金の返済と、実質的に法人税引き下げの穴埋めに使われている。誤った世代間対立に乗せられていないでしょうか?」

 

最後に森永氏はこう指摘する。

 

「結局、高齢者を悪者にしているのは、30年間日本だけ成長できず、賃金を上げられず、少子化の対策もできなかった政府の責任をごまかすためです」

 

誰もが年をとり、いずれ高齢者になる。若者よ、本当の敵は未来の自分自身ではない。

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