令和4年の自転車乗車中の事故での死者数では65歳以上が65.5%を占める(写真:PIXTA) 画像を見る

「4月1日から、改正道路交通法が施行され、すべての自転車利用者のヘルメット着用が義務化されました。ただし、今回の法改正は罰則規定のない“努力義務”のため、実際どこまでヘルメット着用が浸透するか不透明です」(社会部記者)

 

近年、自転車事故による死者数は減少傾向ではあるものの、毎年300人以上が亡くなっている。警察庁のデータによると、自転車乗車中のヘルメット着用状況別の致死率(死傷者のうち死者の占める割合)は、着用よりも非着用が約2.6倍も高く、死亡者の約6割が頭部に致命傷を負っている。このような背景から、ヘルメット着用が義務化されるのだ。かつてバイクも、ヘルメット着用は努力義務であったが、1986年に罰則規定のある完全義務に。近い将来、自転車も同様に規制が強化されることが予想されている。

 

さらに、今後ノーヘルで自損事故を起こし、死亡もしくは頭部にケガを負った場合、保険の補償適用外になるとの噂もある。多くの商品の約款で「故意または重大な過失によるケガ」については、保険金が支払われないと明記されていることなどが理由だ。

 

「現時点で補償内容を変える予定はありません。今回のヘルメット着用は“努力義務”なので、ケガをした場合などはこれまでどおり保険金のお支払いの対象となります」(損害保険ジャパン広報部)

 

まだ“努力義務”の段階なので、“重大な過失によるケガ”には該当しないということだ。

 

「ただし、今後バイクと同じように罰則規定のある完全義務化となれば、保険会社の約款で、頭部のケガに関しては補償適用外になる可能性はかなり高いと思います」

 

こう警鐘を鳴らすのは、交通事故案件を多く扱っているアディーレ法律事務所の長井健一弁護士だ。

 

ヘルメット着用の義務化で、死亡事故を減らす一定の効果は期待できる。だが、いっぽうで事故の原因となる、自転車利用者による道路交通法違反の増加も問題視されている。罰則規定のあるルール違反をする運転者が、じつはたくさんいるのだ。

 

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