6月も熱中症に注意を(写真:PIXTA) 画像を見る

「6月の梅雨どきの熱中症で搬送されるのは高齢者よりも、健康には自信がある、熱中症は自分に関係ないとふだん思っている人が多いです。ちょっとした油断が命を奪うかもしれません」

 

そう話すのは、熱中症に詳しい済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師。

 

熱中症といえば、炎天下が続く8月など真夏のイメージが強い。しかし、東京消防庁によると、昨年熱中症で救急搬送された人数の月別の統計では、6月は1870人だった。8月の1483人よりも多く、7月(2434人)に次ぐ多さになっている。

 

本格的な暑さが訪れる前の6月になぜ、熱中症が増えるのだろうか? 谷口先生がこう解説する。

 

「熱中症への警戒として気温だけを注目している人が少なくありません。しかし、熱中症を予防する目的で作られた『暑さ指数』は気温だけでなく湿度、輻射熱の3つの要素を取り入れた指標。なかでも湿度は7割ほどのウエートを占めます。梅雨の時季は湿度の高い日が多く、熱中症のリスクも増すのです」

 

また、体が季節の変化についていけていないことも原因だ。

 

「体が暑さになれていないことも、6月に熱中症が増える要因のひとつ。汗をかいて体内の熱を下げる機能がうまく働いておらず、さらに湿度が高いと汗をかいても蒸発しにくくなります。そのため体内の熱の放散が少なくなり、体の中に熱がこもりやすくなるのです。また炎天下ではないから水分補給をする時季ではないと思っている人が多いことも影響しています」(谷口先生・以下同)

 

気温が上がりきらない6月でも、湿気のせいで“梅雨型熱中症”になってしまうことがある。暑くないからとつい水分補給を怠り、救急搬送されるケースが少なくない。

 

「気がかりなのが、3年にわたるコロナ禍で座ってする作業が多い、外に出る機会が少ないなどにより筋肉量が落ちていること。筋肉は体内の水分の4割を蓄えており、筋肉量の低下により、脱水症状になりやすくなります。またマスク習慣を続けている人も多く、のどの渇きを感じにくい、マスクをずらして飲み物を飲むのが面倒だ、などの理由から水分補給がおろそかになっています」

 

’22年には全国で1387人(6~9月)が熱中症で命を奪われた。それだけではなく、実は熱中症は後遺症も恐ろしいのだ。

 

「重度の熱中症でも、適切な処置をすることで命を落とすことは防げますが、後遺症が残ってしまうことが少なくありません。とくに脳の血流が不足して、酸素や栄養が届かなくなることで、記憶障害や、判断力が鈍ったり意欲が低下したりする高次脳機能障害、さらには歩行障害などが起こることがあります。熱中症により、ときには人の尊厳に関わるような後遺症になってしまうのです」

 

熱中症の後遺症には、睡眠障害、長期にわたる倦怠感やめまい、頭痛のほかにもパーキンソン病などが報告されている。さらには、認知症のリスクを高める可能性もあるという。

 

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