佐川急便は’24年4月から宅配便の料金を平均約7%値上げします。縦・横・高さの合計が60CMまでの荷物を関東から関西に送る料金は、970円から1千40円に引き上げ。佐川急便は’23年4月にも約8%上げていますから、値上げは2年連続です。
また、ヤマト運輸は’23年4月、日本郵便の「ゆうパック」は’23年10月に、どちらも約10%の値上げを行っています。宅配便全般が値上げ傾向といえるでしょう。
値上げの原因には、燃料費などコスト上昇に加え、「2024年問題」の影響もあるといわれます。
2024年問題とは、「働き方改革関連法」で’24年4月からトラックやバス、タクシーなどの運転業務の残業が年960時間までに規制されますが、これをきっかけに起こる問題をいいます。
特に、現在ドライバーの長時間労働で支えている輸送能力は、’24年以降維持できないといわれます。何も対策しなかった場合、輸送能力は’24年には14.2%、’30年には34.1%不足すると国の検討会が予測するほどです。
ほかにも、残業時間が減るとドライバーの収入が減る、それらが原因で離職者が増えドライバーがさらに不足するなども問題です。
■後手後手の政府対策も微妙な効果
働き方改革関連法は’19年4月から施行されています。
ですが、運転業務は長時間労働が日常的で、残業規制などの実施には移行期間が必要との判断から、施行が5年間猶予されていました。つまり、5年前から2024年問題が起こることはわかっていたのです。
しかし、国が対策を提示したのは’23年6月。しかも、高速道路での大型トラックの最高時速を上げることで、「事故増加の危険性が高い」などの反対意見が相次ぎ、提案を取り下げました。
10月には再配達の半減を目指すため「置き配ポイント」の活用という緊急対策を出しました。置き配とは、あらかじめ指定した玄関先などに届けて配達完了とするもの。不在でも受け取れる半面、盗難などの不安もあります。
こうした置き配の利用者に国からポイントを与えて、ドライバーの長時間労働の原因のひとつ、再配達を減らそうというのです。
置き配ポイントはすでに実施中の企業もあり、国の施策として“お粗末”な印象を持ちますが、なにより税金の使い道として公平性に欠くと思います。ネット通販を多用し置き配指定も難なくできる人がポイントを多く受け、ネットに疎い人との差が生じるからです。
誰もが簡単に使える施策でなければ、国民全体に広まらず、大きな政策効果は期待できないでしょう。もっと合理的で抜本的な対策を国には求めたいものです。
宅配便を含め、物価の上昇は今後も続くでしょう。国は「所得税減税」を進めていますが、’25年に防衛増税を行う方針は変わっていません。私たちは自分の生活を守るため、財布のひもを引き締めるほかありません。