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厚生労働省は、4月8日に「毎月勤労統計調査」(従業員5人以上)の今年2月の速報値を発表。正社員など一般労働者の「現金給与総額」は、36万616円で前年より2%増えたものの、物価の変動を反映させた「実質賃金」は前年より1.3%減となった。

 

生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんがこう解説する。

 

「高騰する物価に賃金の上昇が追いつかず、生活実感に近い実質賃金が目減りしているということです。実質賃金を計算するときに使用するのが『消費者物価指数』(総合)です。

 

2020年を100とした指数で今年2月は106.9となり、前年同月比で2.8%上昇しています。

 

物価上昇分を差し引いた実質賃金がマイナスになるのはこれで23カ月連続。2008年秋のリーマンショック前後の2007年9月~2009年7月に並び過去最長となりました」

 

2021年9月から本格的に始まった物価上昇によって実質賃金は全体的にマイナスだが、業種によってはその下げ幅が大きかったり、逆にプラスに転じたりしているものもある。

 

そこで本誌では、厚生労働省が毎月公表している「毎月勤労統計調査」から、業種別の正社員の2月の月収と2017~2023年の平均月収(ともに「きまって支給する給与」)を調査。2020年の平均月収を100とした指数として月収の推移を調べてみた。

 

注目してほしいのが、2024年2月の指数。消費者物価指数の106.9より大きければ、その業種は、賃金の増加幅が物価上昇分より大きくなっていることになる。

 

今年2月の平均月収で、大きく指数を下げているのが「鉱業・採石業等」(31万4千312円、指数97.7)。2020年の平均月収より額面は7千538円減っており、物価上昇を加味した、2020年を基準とする実質賃金(以下同)を算出すると2万7千826円減少だ。

 

さらに「金融業・保険業」(41万33円、指数102.8)では、実質的な減少額は1万5千456円。

 

もともと月収が高いことから、物価上昇の影響で大きく実質賃金を減らし、年間で18万5千472円も目減りしている。

 

「日本銀行の低金利政策が続いたことで収益を減らしたことも影響しているのかもしれません。実際、低金利の恩恵を受けた不動産業では昇給しています。とくに地方銀行では収益が悪化していたところにコロナの影響も重なり厳しい状況が続いていました」(柏木さん)

 

また「製造業」(34万3千98円、指数103.3)では、実質賃金を算出してみると32万952円。月1万1千257円、年間13万5千84円も目減りしていた。

 

「原材料やエネルギー価格の上昇、輸送費の高騰などの価格転嫁がうまくできなかったことも実質的な賃金が上がっていない要因のひとつ。また製造業では、IT技術者や半導体不足が影響。業務効率化やコスト削減にロボットを活用するなどの『IT投資』が思うように伸びていません。また中小の製造業では後継者不足の問題も影響しているのでしょう」(柏木さん)

 

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