6月になり急増するめまい。長続きする、よくならないと感じたら、それは新疾患“PPPD”かも。薬が効かないしつこいめまいの正体を、新潟大学の医師が解説する。
「つねにフラフラとしためまいに苦しんでいて、外出したときなど“地震が来た!?”と思うくらい症状が強くなります。もう数カ月、この症状のままですが、耳鼻科や脳神経外科で検査しても、何も異常が見つからないため、治療もできない状態です」(50代読者)
もともと、梅雨に入る6月は気圧の変化で、めまいの症状が強くなるといわれているが、冒頭のように、原因不明のめまいに苦しむ人は少なくない。新潟大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科の教授・堀井新さんが解説する。
「検査では異常がないのに、3カ月以上慢性的なめまいに苦しむ人の多くが、これまで日本では“めまい症”とくくられて診断されていました。抗めまい薬なども効かず、困っているのに『気にしすぎですよ』と何の治療もされずにいるケースが多かったんです」
しかし2018年に『持続性知覚性姿勢誘発めまい』(以下PPPD)という病名と診断基準がWHO(世界保健機関)で公式に確立。治療法も研究されたことで、原因不明のめまい症状の改善が見込まれるようになりました」
2010年の国民生活基礎調査によると、めまいに苦しむ人は約2000万人。PPPDはそのうちの15%を占めるといわれているので、単純計算すると、患者人口は300万人いてもおかしくないのだ。
「なかでもPPPDの好発年齢は、50代前半から半ばくらいで、男女比は1対2と女性が多いです」
では、PPPDとはどのような病気なのだろうか。
「めまいは3つに大別できます。一つは脳梗塞のように急に起こる急性めまい。一つはメニエール病や良性発作性頭位めまい症など、めまいの発作を繰り返すけれども、発作と発作のあいだは特に症状がない、反復性めまい。
そして最後が、3カ月以上、一日中、何らかの症状が起こり、めまいの増悪と軽減を繰り返すという慢性めまいです」
新潟大学の調査では、慢性的なめまいに苦しむ患者の、約4割がPPPDにあたるというのだ。
「周りの景色がぐるぐる回るような回転性のめまいではなく、しゃがみ込んだり、立てなくなるような強い症状でもありません。フラフラとしてしまうような軽いめまいがしつこく続きます。
しかし、スマホの動画を見ていたり、動いているものを見るなど、目への刺激があるときに強い症状に襲われたりします。同様に、体を動かしたときにふらつきが強くなることも多いです」
セルフチェックリストでは「スーパーやホームセンターなどの陳列棚を見る」「車、バス、電車などの乗り物に乗る」「本や新聞などの細かい文字を見る」など、めまいの症状の度合いを7段階で評価。72点中28点以上ならば、PPPDの疑いがあるという。
「揺れているものを見て、自分も揺れていると感じてしまったり、物音にビクッとなったり、知覚が過敏な人や、常に緊張している人がなりやすいと考えられています」