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厚生労働省は6月28日、2023年度の労災の補償状況を発表しました。労災とは労働災害のことで、業務や通勤中に原因があるけがや病気、障害、死亡、そして過労死などを含むものです。

 

2023年度は労災全体の請求件数、認定件数ともに前年より増えていますが、なかでも精神障害に関する労災の増加が顕著です。労災請求は前年度より892件増えて3千575件。そのうち労災認定を受けたのは前年度から173件増えて883件でした。認定件数は5年連続で過去最多を更新しています。

 

精神障害による労災認定の原因でもっとも多かったのは「パワハラ」の157件。次いで「悲惨な事故や災害の体験・目撃」の111件、「セクハラ」の103件、「仕事内容や仕事量の大きな変化」の100件と続きます。

 

2023年9月の認定基準改定で追加された「カスタマーハラスメント(カスハラ)」では52件が認定され、うち45件が女性からの請求でした。女性がカスハラの標的にされやすい実態が浮き彫りになった格好です。

 

また、認定を受けた方の年代別では40代が239件で最多。20代、30代、50代と続きます。50代の認定件数は190件ですが、そのうち自殺が30件と最多です。痛ましい事態に陥る前に、仕事を休むなど対策をとりたいものです。

 

■業務中のハラスメントは労働基準監督署に相談を

 

ただ仕事でストレスを抱えていても、「お金が必要だから」「住宅ローンもあるし」などと、がまんして働き続ける方もいるかも。

 

そこで、業務中のハラスメントなどは、労働基準監督署に相談しましょう。審査を経て労災と認定されたら、おもに2つの補償が受けられます。

 

1つ目は医療費を全額補助してくれる「療養(補償)等給付」です。労災保険指定の医療機関なら、治療費を払う必要はありません。指定の医療機関でない場合は、労災請求すれば全額返金されます。

 

2つ目は仕事を休んだ期間にもらえる「休業(補償)等給付」です。給料の出ない休業の4日目以降から、原則病気などが治るまで、給料のおよそ8割が支給されます。

 

労災による補償はほかにも「障害補償」「介護補償」「遺族補償」などがあります。

 

労災の補償はかなり手厚いものですが、労災請求のうちどれくらい認定されたかを示す「認定率」を見ると、2023年度の精神障害では34.2%。3件の請求で1件しか認定されないのが現状です。

 

もし労災認定がおりなかった場合は、会社員なら健康保険から給料の3分の2が支給される「傷病手当金」を頼りましょう。傷病手当金は出勤した日を含まず、欠勤日を通算して1年半が最長です。 病手当金の期間が終了した後は、「障害年金」をもらえる場合もあります。

 

使える制度はいろいろあります。これらをリレー的に利用して経済的な不安を取り除き、ゆっくり療養してほしいと思います。

経済ジャーナリスト

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