東京都内では平年比3.3倍の落雷が発生(写真:時事通信) 画像を見る

記録的猛暑となった今年、突然の轟音と稲光に驚く機会も増えている。雷の恐ろしいところは、離れたところに落ちた場合でも、家電に大きなトラブルを引き起こす危険性をはらんでいるところだ――。

 

「自宅近くに雷が落ちて、テレビ、エアコン、冷蔵庫などが壊れました。連日の猛暑の中、突然エアコンが使えなくなり、家族が室内熱中症にならないか心配になりました。数日間、故障を免れた扇風機3台で、何とか暑さをしのぎました」(東京都在住・50代主婦

 

ここ最近は、頻繁に全国各地でゲリラ雷雨が発生。台風並みの記録的豪雨による河川の氾濫や道路の冠水のほか、落雷の発生件数も激増している。雷の観測を行っている民間の気象会社「フランクリン・ジャパン」によると、今年7~8月の全国における落雷数は56万回。特に関東1都6県では16万5千回も発生。平年(’00~’23年の平均値)の約1.6倍にのぼった。なかでも東京は平年の約3.3倍の1万8千900回。ほかに、埼玉が約2.8倍の4万1千回、茨城では約1.8倍の3万500回……と、関東エリアの落雷数の多さが際立つ。

 

落雷の増加に伴い、東京や埼玉にある企業や公共施設、そして一般住宅で、電子機器や家電製品などが故障する被害も相次いでいる。そのトラブルは「雷サージ」という、落雷時に発生する瞬間的な過電圧や過電流が原因だ。落雷が直撃しなくても、落ちた場所で発生した強力な電磁波が電線や通信線を伝って、建物内のコンセントなどから電気製品に流れ込み、被害をもたらすのだ。

 

影響を及ぼす範囲は、落雷地点から2キロ圏内ともいわれ、雷が落ちた場所が家から離れていたとしても、雷サージが建物内に流れ込む可能性は大いにある。9月以降も、雷注意報が頻発しており、まだまだ油断はできない。では、落雷から家電を守るためにはどのような対策をすべきなのか。

 

「まず、家の近くで雷が鳴ったら、家電の電源プラグをコンセントから抜くことが最善の防御策になります。とはいえ、すべての電源プラグを抜くのはあまり現実的ではありません。あらかじめ、雷サージから電子機器を守る“雷ガード機能付きタップ”に、電源プラグをつなぐことをお勧めします」

 

こう語るのは、家電アドバイザーの鴻池賢三さん。“雷ガード”には電源、USB、アンテナ、電話回線タイプなど、さまざまな種類がある。価格は数百円から数千円程度で購入できる。作動状況を確認しやすいランプ付きのものを選ぶようにしよう。

 

「すべての家電製品に雷ガードを接続するのは難しいので、自分にとって壊れたら困る家電から優先的に取り付けていきましょう。特に、テレビやパソコンのように、電源プラグに加えアンテナ線や電話線など複数の線でつながっている電子機器は、雷サージの影響を受けやすいので最優先にしたほうがいいでしょう」(鴻池さん)

 

ただし、一度でも雷サージを受けた雷ガードは、保護機能を失ってしまうため、また新たな雷ガードに交換することを覚えておこう。

 

いっぽう、雷サージの電圧エネルギーの大きさによっては、雷ガードでも家電被害を防げないこともある。そういうときには、火災保険に加入していると心強い。

 

「家電に限らず、落雷による“建物”や“家財”の損害は、火災保険でカバーすることができます」

 

そう教えてくれたのは、損害保険に詳しいファイナルシャルプランナーで、エフピースマイル代表の中山弘恵さん。だが、注意すべき点がある。

 

「保険の対象を“建物”のみにしていた場合、“建物を含む敷地内に設置されているものだけ”が補償対象となるため、落雷で故障したテレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品は、敷地内に収容された“家財”という扱いであるため、補償の対象外となります。賃貸ではなく分譲住宅、分譲マンションに住んでいる場合は、“建物”と“家財”の両方を対象とした火災保険に加入しておくことをお勧めします」(中山さん)

 

賃貸住宅に住む場合は、ほとんどのオーナーが“建物”に対する火災保険に入っているので、借り主は自分の所有するものを補償する“家財”のみに加入すればいい。

 

中山さんによると、オール電化の一戸建てに住む家族が、雷サージによって、家電を含む家の電気系統の80%以上が壊れたというケースがあったそうだ。

 

「テレビやエアコンなどの家電だけでなく、ガレージの電動シャッター、電子キー式の玄関などが軒並み壊れたそうです。買い替えや修理代で被害額は100万円以上になりましたが、火災保険によってほとんど補償されました」

 

雷サージの電圧が高ければ、家の中の家電が“全滅”することも。その場合、被害額総額も100万円どころではすまないだろう。損害保険料率算出機構「火災保険・地震保険の概況(2023年度)」によると、落雷被害による保険金の支払件数は、’18年度は2万6千987件だったが、’22年度には4万3千515件と大幅に増加している。

 

ただし、落雷被害を受けても、補償対象外になるケースも。

 

「たとえば経年劣化や消耗が原因と判断された場合や、落雷被害から保険金請求まで3年以上経過した場合などは補償の対象外です」(中山さん)

 

今のうちに保険内容を見直し、未加入の人は加入を検討すべきかも。

 

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