素晴らしい演技と絆で、日本中に感動を与えた、りくりゅう。だが、その栄光には功労者がいる。神解説で競技に花を添え、“ペア不遇”の時代に競技の火を守り続けた高橋成美さん(34)だ。
■「ティラミス食べたい」に2人の想いを感じた
「ショートは5位発進でしたが、最終的な順位はフリーとの総合点で決まります。ショートの直後、龍一はうなだれていました。でも、璃来ちゃんとのペアは、圧倒的な力があるので、気持ちさえあれば、大丈夫だと信じていました」
そう語るのは、元フィギュアスケート五輪代表で、タレントの高橋成美さんだ。ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで行われたフィギュアスケートペアで、日本初の金メダルを獲得した、りくりゅうこと、三浦璃来(24)と木原龍一(33)ペア。ショートプログラムでは、リフトのミスから5位となるも、フリープログラムでは完璧な演技を見せ、世界歴代最高得点(158.13)で大逆転。
この感動をさらに高めたのが、かつて木原選手とペアを組んでいた成美さんの“神解説”だった。現地で2人を見届けた成美さん。フリープログラム前の公式練習で、元パートナーの“異変”を感じていたという。
「笑顔が少なかったのと、いい意味での“無駄なコミュニケーション”というのも少なく見えて。龍一は、みんなが緊張しているなかでも、周囲を笑わせてリラックスさせてくれるんですが、私の目から見ても、かなり“いっぱい、いっぱい”に見えました。練習で見せた技の精度もふだんの完璧さが欠けている気がして……」
実際、前日のショートプログラムでの失敗を引きずっていた木原選手。前日は眠れず、練習中も涙が止まらなかったというが、三浦選手の励ましもあって、気持ちを立て直す。そして、挑んだフリー。映画『グラディエーター』の音楽に合わせ、息もぴったりに高度な技を披露していくりくりゅう。
「木原選手が、三浦選手を投げるスロートリプルループという技を決めた途端、無意識に立ち上がっちゃって(笑)。
ペア競技をやっていた身からすると、ジャンプの技は、最後は“神様がほほ笑むかほほ笑まないか”、なんです。この技が美しく決まったのが、うれしくて。資料も机に置いてきぼりだから、座らなきゃと思いつつ、後半のプログラムもジャンプやリフトも完璧で、気づいたら最後まで立ち続けていました」
2人の演技に合わせて、「すごい、すごい、すごい」を8連発!
「『すごいで、片づけられない。すごい以上の言葉を言いたいんだ!』という気持ちでした。
『こんな演技は宇宙一』『開いた目がふさがらない』。本当に言葉に困って素直に出てしまったんです」
金メダル決定直後、りくりゅうを急きょインタビューすることになった。大喜びで取材ゾーンへ出向くと、成美さんの姿を見つけた木原選手が握手を求めてきた。
〈なるちゃん、本当にありがとう。なるちゃんが、ペアにいたから、今の世代がみんなで出てきて。なるちゃんがいたから俺たちが(金メダル)取れた……なるちゃん、ほんとうにありがとう〉
「龍一も、私が来るとは思っていなかっただろうし、そこで出た言葉だから本当に心からだと感じて、パニックになるほどうれしい一方、恐縮する気持ちもあって……。テレビのスタッフさんに質問を託されていたんですが、その瞬間、宇宙に質問が飛んじゃいました(笑)」
涙声で続けた取材。心に残ったのは、三浦選手の「ティラミス食べたい」という言葉だった。
「ずっと、栄養のことを考えて(節制して)過ごしてきたんだなって。この一言に、2人の想いが全部詰まっているように感じました。解放されて、はじめに出た飾りのない素直な言葉が心に刺さりましたね。龍一の『寝たい』もリアルすぎましたけど(笑)」
成美さんの提案で、りくりゅうと3人で声をそろえて「ペア、大好き~!」と笑顔で取材を終えた。
