3月10日に行われたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)1次ラウンド・プールCの最終戦で、侍ジャパンはチェコを9対0で破り、無傷の4連勝で1位通過を決めた。
大谷翔平(31)の満塁ホームランや吉田正尚(32)の逆転2ランなど選手たちの劇的な活躍に連日日本中が熱狂するなか、“蚊帳の外”にいるのが地上波テレビ局だ。
「今回のWBCは、日本国内では大手配信サービス『Netflix』が全試合を独占配信しており、前回はあった地上波での中継は一切ありません。各局は試合終了後であればNetflixから映像を提供してもらえますが、それも使える時間は限られており、生放送中は当然試合映像を使うことができません。そのため、各局の試合放送中の時間帯のニュース番組は”苦肉の策”を強いられています」(スポーツ紙記者)
日韓戦が行われている最中に放送された7日の『サタデーステーション』(テレビ朝日系)は試合状況を“手書き”のスコアボードで報道。太字のペンで「鈴木の2ランで1点差に」「大谷鈴木吉田のHRで逆転」などとイニングごとにボードに書き込んで試合展開を伝え、《手書き! ww 》などとXで失笑を誘った。
また、8日のオーストラリア戦の経過を報じた『有働Times』(テレビ朝日系)では、昭和のファミコンの野球ゲームのようなドット絵で試合の様子を再現。どの塁に走者がいるのか一目でわかる”バーチャル球場”のCG画像で状況を説明し、《ファミコンかよw w w》《テレ朝ファミスタじゃん笑》などという声があがった。
そんな中、同じく8日午後9時から生放送していた『Mr.サンデー』(フジテレビ系)による他局より頭ひとつ“突き抜けた演出”が話題となっている。
試合途中だった番組冒頭では、他局同様にスコアボードで試合の様子を伝え、試合終了後の午後10時過ぎからWBCの特集を改めて始め、試合開始前の東京ドームの様子などを伝えたのちに、前ヤクルト監督の高津臣吾氏(57)、元巨人コーチの宮本和知氏(62)、番組MCの宮根誠司(62)、フジテレビの中村光宏アナ(41)ら4人による試合中に収録した“実況解説”を放送したのだ。
「いつものスタジオとは別に用意された実況解説席に4人が並んで座り、手元のモニターでNetflixの試合映像を見ながら実況して、試合展開に対して一喜一憂するリアクションのみを放送するという、異例な演出でした。
『おっと!レフトへの打球!吉田選手の守備範囲でした。1アウト』『打ち取った!』『スリーアウト!』など、音声だけ聞けば普通の実況ですが、画面に写っているのは”おじさん4人”が手を叩いたり叫んだりする姿ばかり。吉田選手の逆転2ランが飛び出した際も、実況席は大騒ぎでしたが、肝心の映像は一切流れませんでした」(前出・スポーツ紙記者)
実況を終えて映像がスタジオに戻ると、宮根は「あの〜、これがいわゆるニューメディアです(笑)」「1周回って新しいでしょ?」などと自虐気味に自賛したのだが……。X上では、お株を奪われた“地上波の末路”としてこのような声が。
《ネトフリを家で見る様なおじさん達を見るテレビ番組w テレビ局要らんやんw》
《メディアが野球を盛り上げたい気持ちは分かるけど、WBCをきっかけに視聴者がネトフリに流れて、そのままテレビに戻ってこないことへの危機感はないのかね》
《Mr.サンデー、WBCの映像使えないからってYouTuberみたいなことやってて地上波の衰退を目の当たりにしてる》
《WBCの映像もなくおっさんたちがワイワイ実況だけやってる。これ何を見せられてるの??マジでこれが地上波の現状。利権だけを守り続けて日本の変革を潰し続けてきた末路》
《終わりの始まり。たかが野球ではなくいろんなことがこれになる》
「Netflixによる今回のWBCの配信は、”スタジアム以上の臨場感”を掲げている通り、全方位からのカメラアングルなど映像のクオリティの高さも好評です。そもそも同社は、大ヒットした実写版『ONE PIECE』や『地面師たち』など、莫大な予算をかけたオリジナル作品を独占配信していて、コンテンツ力でもテレビ局を圧倒しています。
さらに、Netflixは前回大会で日本では世帯視聴率48%を記録したWBCに合わせて『初月498円』という半額キャンペーンを仕掛けています。今回加入した層が、そのまま高画質な試合を楽しみ、豊富な独自作品に触れれば、もう地上波には戻ってこない可能性もあるでしょうし、同社はそれを狙っていると思います。
ネットの普及により、スポンサーも含めかつてのような強力な独占権を失ったにもかかわらず、安易で安価なコンテンツに終始するなど、テレビ局には危機感が決定的に欠けていました。広大な市場を独占できる既得権益に胡座をかいてきたテレビ局が衰退するのは必然と言えるかもしれません」(メディア文化評論家)
地上波はこのまま“黒船”に倒されてしまうのか――。
