京都府南西部に位置する八幡市。約6万8000人の人々が暮らすこの中規模都市が、近頃にわかに注目を集めている。
5月21日、川田翔子八幡市長(35)は現職の首長として全国初とみられる「産休」取得の方針を明かし、26日に正式表明。「産前休暇を8週間、産後休暇を8週間取得する」と説明した上で、産休中は副市長が職務代理を務め、重大な意思決定や緊急事案には川田氏もリモートで対応するほか、育児休暇は取得せずに、フレックス勤務とリモートワークを活用しながら仕事と育児の両立を目指すとしている。現職市長が産休を取得するのは全国で初めてとみられる。
川田氏は’23年11月の八幡市長選で初当選した全国最年少の市長で、私生活では’25年12月に結婚していた。出産予定日は9月中旬で、7月20日~11月上旬ごろまでが産休期間となる。なお、産前、産後それぞれの休暇期間を8週間と定めていることについて、一般職員の産休に関する市の施行規則や労働基準法に則ったものだと説明している。
「現職の国会議員としては、橋本聖子参院議員(61)が’00年に史上2人目となる出産を経験。ただ、当時は参院議員の欠席理由として『産休』を書き込む欄がなく、橋本氏の出産を契機として議員規則が改正され、正式に『産休』の項目が追記されました。このように国政レベルでは変化が起きているのですが、川田氏のような特別職の市長には労働基準法や市の条例が適用されず、産休を取得することが制度として想定されていません」(全国紙記者)
川田氏の表明は全国的に取り上げられたことで反響を呼び、兵庫県・川西市の越田謙治郎市長(48)は5月23日のXで、《全国青年市長会のメンバーである京都府八幡市の川田翔子市長が、産休取得を宣言されました。このような積極的な発信は、次世代の女性リーダーたちにとって大きな後押しになります。お体を大切に、母子ともに健やかなご出産となりますよう、心から祈念しております!》とエール。そのほか、一般のユーザーからも、応援の声が相次いだ。
《制度の欠陥を改善するタイミングなのだから、国として動くべき事案 もっと現場の行政の長から意見が上がってきてもいいはず》
《素晴らしいことです。これから彼女のようなリーダーが増えるといいと思います》
《女性の市長が産休取る件、否定の声を見てると第一号って本当に大変だなあと思う。どうにか頑張って跳ね除けて以後当たり前にして欲しい》
いっぽう、一部では否定的な声も見られる。その多くは、市民の付託を受けたトップが、一時的であれ不在となることに対する懸念だった。
《市の最高責任者が育休…休んでる時に災害が起きたらどうする?》
《公職が何かが分かっていない、としか言いようがない》
《市長ってそんな簡単に代理できんやろ》
このように賛否が巻き起こるが、川田氏の決断の背景には一体どのような思いがあったのか――。本誌が八幡市役所に対して質問状を送付したところ、6月5日に川田氏本人から回答を得ることができた。そこに記されていたのは、かつて川田氏が抱えた葛藤だった(以下、カッコ内は川田氏の発言)。
「今回、産休取得を表明させていただいたのは、男女共同参画や女性の管理職登用が進む一方で、管理職と出産育児の両立が難しいと考えられている昨今、私自身がこれまで仕事に一心に打ち込んできた結果、結婚や妊娠・出産といったライフイベントを後回しにせざるを得なかった経験も踏まえてのものでした」
その上で、川田氏は下した決断の意義について、「組織のトップが仕事に打ち込みながらもライフイベントを大切にする姿勢を示すことで、トップが一時的に机に居なくても、きちんと意思疎通を取りながら業務を遂行していく姿を発信し、キャリアとライフイベントの両立に悩む数多くの女性達に、前向きなメッセージとなればと考えたからです」と述べた。
とはいえ、先述したように否定的な意見もあり、これに対する率直な思いも気になるところ。川田氏は、「一部いただいている否定的な意見に関しては、市長という仕事の職務内容や給与体系の特殊性ゆえにご理解いただきにくいことなどが原因として挙げられると思います」としたものの、以下のような決意で締めくくった。
「私としては、寧ろ市長として市政運営の停滞を防ぐために、あらかじめ期間を決めて職務代理を置くという措置をとらせていただくものですし、不在時の業務体制の構築や引継ぎについては丁寧に取り組んでいるところですので、これまで実現してきた様々な施策を含め、任期満了時までの実績もきちんと市民の皆様にお示しできるよう、組織一丸となって粛々と取り組んでまいりたいと思います」
