《先日初めてアライグマの赤ちゃんを街中でみた。 通報した方がいいんだよね確か。》
6月27日、声優の中村悠一(46)が自身のXで、街中で見かけたというアライグマの動画を公開した。
《アライグマの赤ちゃんかわいい保護されますように…》
《かわいい顔して害獣ですもんね…。》
《アライグマの赤ちゃんかわいい…! でも特定外来生物だから通報した方がいいよね》
《アライグマは見た目はめちゃくちゃ可愛いんだけど、実際は立派な害獣だからね》
などのコメントが寄せられた。
じつは東京都23区や多摩地域で野生のアライグマが急増しており、東京都もホームページなどで注意喚起をしている。
なぜ都会でアライグマが急増しているのだろうか。生態学者で(株)うぃるこ代表取締役社長の山本麻希さんはこう話す。
「アライグマは北米産の野生動物で、英語で『ラクーン=厄介者』というニュアンスがあるほど狂暴で、本国アメリカでも獣害扱いとなっているのですが、日本では1970年代にアニメ『あらいぐまラスカル』で描かれたそのカワイイ顔立ちで一躍人気となりました。
以来、業者がアライグマをペットとして輸入販売を始めたのですが、生来の気性の荒さから飼育放棄が続出し、都会で野放しになった末、自然繁殖し、個体数が増えました。
その結果、農作物の被害を出したり、日本の生態系に悪影響を与えるため、2006年に特定外来生物に指定されました。日本では東京、神奈川、埼玉などの都心周辺、近畿でも大阪、京都など全国的に都会で急増しています」
環境省が警告する「特定外来生物」とは、「生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの、または及ぼすおそれがあるもので、輸入、放出、飼養等、譲渡し等の禁止といった厳しい規制がかかる生物」のことで、アライグマもその対象となっている。
たとえば、東京都では2013年にはアライグマの捕獲数が201頭だったのに、2024年には1541頭に増えている。
もうひとつ、都会に出没するアライグマに似た野生動物に、ハクビシンがいる。
「ハクビシンは東南アジア産のジャコウネコ科の野生動物で、アライグマと生態が似ています。しかし、ハクビシンが東南アジアから入ってきたとされるのは明治時代以前のことです。ハクビシンも害獣であるものの、すでに日本の生態系に入って長い時間が経過しており、なじんでしまっている側面もあります」(山本さん、以下同)
とはいえ、ハクビシンもこの10年間で増えており、2013年の捕獲数は380頭だったのに対し、2024年には644頭に。
両者とも夜行性のため、一見すると見分けがつきにくいが、アライグマはしっぽがシマシマ模様の特徴がある。
アライグマやハクビシンがカワイイだけならよいが、家屋被害や健康への影響、環境被害が問題となっている。というのも、アライグマやハクビシンは、
・夜行性
・木に登って活動できる
・雑食
という特徴があり、都会での生活に順応性が高いことがうかがえるからだ。これが被害を拡大し、かつ捕獲しにくいゆえんだからだ。
「アライグマもハクビシンも、夜行性で爪を使って木や柱をよじ登ることができるため、建物の上まで登って屋根裏に入り込むことができます。彼らは屋根裏を荒らしたり、住居の断熱材をビリビリに破壊するなどし、人間の住環境に侵入してきます。
歴史建築物の多い京都などでは、古い神社仏閣などの建物の中に入り込むという被害が多く報告されています」
雑食なので人間の出した生ごみをあさるほか、果樹などの被害も深刻だ。
「イノシシやシカといった野生動物に比べると体が小さいので、畑の周りにネット(38cmくらいの高さ)を張って、そのネットの上に電気柵を1本張り、侵入を防ぐようにしてください」
健康被害の問題も無視できない。アライグマやハクビシンについたダニからウイルスなどの感染症が拡散するリスクがある。
「マダニがウイルスや病原菌を連れてペットの猫や犬、そして人につくことがあります。多いのが、最近話題になっているSFTSウイルスや日本紅斑熱です」
SFTSウイルスは、発熱、倦怠感、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛などを発症し、重症化すると死に至る場合もある。致死率は10〜30%という報告もでているほど。
犬や猫などのペットから人への感染もありうる。2024年に国内で初めてのヒト—ヒト感染が報告されて以来、全国的に感染が拡大している。日本紅斑熱は、発疹、発熱、頭痛、倦怠感などの症状が出やすい。
被害に遭わないためにも、まずは、害獣を家屋内に入れないことが重要だ。
「出しっぱなしのペットのエサをアライグマやハクビシンが食べたりすると、そのままその家に住みついたりしますので、注意してください」
生ごみを外に出しっぱなしにしておくのも危険だ。
さらに山本さんは、アライグマの雑食性や狂暴な性質から、日本の在来生態系を破壊してしまうことへの懸念も示す。
「アライグマは水辺を好み、メダカなどの魚類やカエルやサンショウウオなどの両生類やカメなどの爬虫類、サギ、フクロウといった樹上で繁殖する鳥類も捕食します。サンショウウオなどの希少な両生類などもアライグマの被害で根絶やしになっているところもあるくらいです」
現在は各自治体が駆逐をしているが、自治体だけでは難しいのが実情だそう。
「夜行性なので、センサーカメラなどを設置し、もし、アライグマが撮影されたら、そのエリアで重点的な捕獲を行うなど、計画的な根絶に向けた取り組みが必要です。これ以上アライグマが増加しないよう地域全域で取り組まないと、個体数の増加速度が高い動物なので、なかなか根絶は難しいでしょう」
アライグマの生態を知ること、また、見かけたらすぐに自治体の窓口に連絡するなど、早めの対策が大切だ。
画像ページ >【写真あり】東京西麻布の電線の上を走るハクビシン(他1枚)
