全国の小売店のたまご1パック(10個入)の平均価格が過去最高の値段に(写真:IYO/PIXTA) 画像を見る

「はあ……」

 

都内のあるスーパーの卵売り場で、女性の大きなため息が聞こえた。「物価の優等生」と呼ばれてきた卵の高値が、長期にわたって消費者の家計と小売店の経営を圧迫している。

 

農林水産省が10月27日に発表した食品価格動向調査によると、全国の小売店における卵1パック(10個入)の平均価格は312円となり、過去最高値を更新した。高止まりが続いている背景には、中東情勢の悪化や円安による輸入飼料価格の上昇がある。

 

卵を大量に使用する専門飲食店も深刻な影響を受け、かつてない苦境に立たされている。

 

東京・築地場外市場に店を構え、連日多くの観光客で賑わい、演出家のテリー伊藤さんの実家でもある老舗玉子焼店「つきじ丸武」の四代目社長、伊藤政光さんに現状を聞いた。

 

「スーパーでパック卵が値上がりしている中で、うちあたりは今のところ価格据え置きでやっているんで。逆にその分、お買い得感みたいなものが出ているかなというのはちょっと感じますね」

 

と、明かす。しかし、これから迎える冬場は、クリスマスやお正月に向けて卵の需要が急増し、例年価格が跳ね上がる時期でもある。

 

「数年前より仕入れ価格は倍以上。とくに年末やお正月の需要でたくさん買ってもらえる現実があるんですが、儲けとしては毎年そんなにないですね」(伊藤さん、以下同)

 

伊藤さんはこう続ける。需要が高まる繁忙期であっても、利益を確保するのは容易ではないという。

 

「12月に関してはアルバイトを入れたり、外部の冷蔵庫を借りたり、物流のトラックを借りたりとか。トラックの燃料なんかも上がっていますしね。もうすべての面において、何でもかんでも値上がりしている昨今なので、非常に厳しいです」

 

さらに、養鶏業界全体が警戒を強めているのが、高病原性鳥インフルエンザの流行だ。国内では2020年以降、6シーズン連続で鳥インフルエンザが発生しており、2022年シーズンには約1771万羽が殺処分され、深刻な卵高騰と品不足を引き起こす「エッグショック」に見舞われた。

 

その際でも、価格もサイズも変えずに据え置きで営業を続けたという伊藤さんだが……。

 

「これで、鳥のインフルエンザなんか出ちゃったら、仕入れに関してまるっきり今の状態を保てないんでね。年末の需要で卵の価格が上がってしまうのは例年のことなんで仕方ないかなとは思うんですが」

 

先の見えない不安を口にしつつも、伊藤さんはなんとか現行の価格を維持して客に喜んでもらいたいという強い思いをのぞかせる。

 

「おいしいものを食べると人間は幸せな気持ちになると言われているんで。なんとかうちの玉子焼きを食べてもらって、少しでも幸せな気分を一時でも味わってもらえればなと思って。できる限りは頑張っていこうと思っています」

 

だが、終わりの見えないコスト増は、企業努力の限界に近づきつつある。従業員の生活を守る立場として、伊藤さんは苦渋の決断も視野に入れている。

 

「とはいえ、何でもかんでも物価が高騰しちゃっているので。うちも従業員を抱えているし、その生活もあります。どうしようもないときには、価格の改定というのを考えなきゃいけないかなとは今の時点では思っています」

 

卵の安定供給に向け、国や民間企業も鳥インフルエンザワクチン接種導入の検討や調達ルートの分散化など対策を進めている。しかし、消費者と店舗の我慢比べは、まだまだ続きそうだ。

 

画像ページ >【写真あり】年末年始に向けてたまごの需要は増えるので関連商品の価格転嫁が予想される(他1枚)

出典元:

WEB女性自身

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