第39回 母の食いボケと脳の関係

<食は、命>は、死んだ父の言わば、専売特許だった。

私の前作「THEダイエット!」の中でも語られるが、父は、大学時代、横浜の米軍基地でアルバイトをし、アメリカ軍の食の豊かさに驚嘆したのだった。それに引き換え、当時の日本の食生活の貧しさ・・・戦う前にすでに<食>でアメリカに負けていた、というのが、父の持論だった。

父の食に対する憧れや執着は、アメリカ軍から始まった、と言っても過言ではないだろう。

一方、母は、と言うと、父とは対照的に<節制する人>だったと思う。私は、母が、食に対して執着するのを見た事がなかった・・・アルツハイマー病になるまでは!

imageアルツハイマー病の母は、驚くほど食べるようになった。そして、食べたことを忘れるようになった。

体(胃袋)は、お腹いっぱいでも、脳が、忘れているので、ドンドン食べ続け、その結果、消化不良を起こし、下痢するという悪循環を引き起こす。

きっと脳の満腹中枢が、アルツハイマー病によって機能しなくなっているんだろうな。

image「THEダイエット!」では、<食と心の関係>を考察したが、<食と脳の関係>もあったか〜、と今さらながらに気が付いている始末だ。

ただ、いたく感心するのは、母は、一時、食に執着しても、しばらくすると忘れ、自然に下痢も治まるのだ。

母にとっては、食べるという行為は、ガム・テープやプラスチックの容器と同じことなのかも知れないなあ。

 

 

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