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(C)おかざき真里/祥伝社フィールコミックス

 

『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『マンガ』ということで、幼いころからマンガ好きな、歌人・小説家の加藤千恵さんが最推しドラマを紹介!

 

【最推しマンガ】『かしましめし』祥伝社フィールコミックス

 

食べ物が出てくる物語が好きだ。食にまつわる名言も多いように、食事というのは確かに、その人を作り出す要素の一つだと信じている。

 

『かしましめし』は、タイトルからしてグルメ漫画なのだろうと想像していた。おそらく料理が多く登場して、それについての話になるのだろうと。けれどそれだけではなかった。確かにおいしそうな料理はたくさん出てくるし、いずれもレシピまでついているので実用性も高いのだが、登場人物たちのバックグラウンドの細かさに意識を向けずにはいられない。

 

主な登場人物は三人。

 

主人公でもある千春は、憧れだった会社を心の問題によって辞め、今は無職。そこに強い罪悪感をおぼえている。ナカムラは仕事熱心な女性だが、同じ職場の恋人とかつて婚約破棄したことが関係して、社内に居づらさをおぼえることもある。唯一の関西弁キャラでもある英治は、同性愛者で、彼氏もいるのだが、近頃不仲だ。

 

美大の同級生である二十八歳の彼らは、別の同級生の葬儀で再開したのを機に、親交を深めていく。三人が会う場所は、たいてい千春の家で、あいだにはごはんがある。悩みを抱えながらも、彼らは本当においしそうにごはんを食べる。時にたくさんの言葉を交わしつつ、時に黙りつつ、とにかく食べる。彼らにとって食事は、生きるための行為であり、幸せになるための行為でもある。

 

一話完結ものとしても楽しく読めるのだが、三人それぞれの背景を追っていくという点では、早く続きが読みたくなって仕方ない作品だ。

 

著者であるおかざき真里さんの代表作であり、かつてドラマ化もされた『サプリ』では、広告代理店での仕事や、恋愛に悩む主人公の姿が、職場や年齢が異なる立場から読んでもリアルで、息苦しくなるほど「わかる!」と思った場面も多かった。

 

本作の『かしましめし』も同じく、時おり激しい共感に襲われる。共感以外にも、自分がうまく言葉にできずにいた感情を、短く言い表されていく爽快さもある。

 

《問題が解決したって 助かるわけじゃないんだ》

 

《急に降り出す雨のように/思い出す/人がいる》

 

引用していけばキリがないほどの、ささやかでありながら胸に響くフレーズ。どのページも深く読み込みたい。