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(イラスト:ちたまロケッツ)

 

『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『お笑い』ということで、『オモロー山下』として活動した元芸人で、現在はインタビュアー・ライターとして活動するインタビューマン山下さんが最推し芸人を紹介!

 

【最推し芸人】天竺鼠(瀬下豊・ツッコミ担当/川原克己・ボケ担当)

 

なすのかぶりものをして叫ぶシュールなコントなど、尖ったネタで「次売れる」と言われ続けているコンビがいます。独特なボケの川原くんと、元ヤンキーのツッコミ・瀬下くんからなる、天竺鼠です。

 

キングオブコントで3度決勝進出を果たした実力もあり、多くの先輩芸人からも高評価を得ていますが、現在まで彼らの実力に見合った活躍はできていません。本人曰く、10年前からネクストブレーク芸人と言われているそう(笑)。

 

僕の持論ですが、売れっ子芸人になる条件は、ネタの面白さとトーク能力の高さだと考えています。

 

天竺鼠のネタは、実績にもあるように素晴らしいもの。

 

漫才において、つかみ(最初のボケ)は早ければ早いほどよいとされています。彼らのつかみはとにかく早い。たとえば舞台に出てきてセンターマイクを持ち上げ、自分たちの前に漫才をやったコンビのほうに向かって「(マイクを)忘れていきましたよ!」というボケ。普通ボケには前フリが必要ですが、このボケは自分たちの前の漫才をフリに使うという最速のつかみなんです。

 

トークに関しても、川原くんはどんな場面でもボケまくります。奇才と呼ばれ、トリッキーなボケを繰り出す野性爆弾のくっきーですらもツッコミに回ってしまうほど。

 

なぜ売れる条件をクリアしている彼らが、ネクストブレーク枠に甘んじているのか? 疑問に思っているとき、東野幸治さんのコラムを読み、「これか!」と納得しました。

 

ある芸人さんが明石家さんまさんに「テレビに出るには何が必要ですか?」と聞くと、さんまさんは即答で「必要なのはかわいげ」と答えたそう。

 

川原くんのボケは面白いのですが、かわいげはあまり感じません。彼は基本シュールなボケを続けるため、見ている側はかわいげより「この人は大丈夫な人か?」と不安を感じてしまうのです。対して、くっきーはあのキャラでも時折ツッコむので、そこがかわいくうつります。

 

しかし、僕は一度川原くんのかわいげを目撃しました。

 

以前、彼がピース又吉とトーク番組で共演した際、2人とも声が小さいというボケをやっていたときのこと。最初はウケていたのですが、そのノリがあまりにも長く、お客さんが引き気味に。そこで川原くんが「又吉さん! テンション上げていきましょう!」とツッコんで笑いにしていたのです。彼はお客さんが引いている空気を察知して、本当はボケ続けたいところを先輩の又吉に気を使ってボケるのをやめたのです。そこに僕はかわいげを感じました。

 

こうしたかわいげのある場面を増やしていけば、天竺鼠は売れ切るかもしれません。

 

しかし、彼らは「売れたい気持ちはあるが自分たちがやっているスタイルを変えてまで売れようとは思わない」と言います。芸に対してとてつもない清さを感じます。

 

久しぶりに職人気質な芸人を見たような気がしてうれしくなりました。今後の天竺鼠の活躍から目が離せません!

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