3月10日、福島県立相馬高校から、12年ぶりの東大合格者が誕生した。稲村健君(18)は、東北大学志望だったが、東大教授や東大生らによる”被災地支援”を受け、チャレンジを決意。見事理科一類に合格した。

 

3年間、彼の担任を務めた松村茂郎先生(現・県立福島高校教諭)は、震災直後、知己のあった東大の松井彰彦教授に「うちの生徒に勉強をさせてください」と頼み、学校がまだ閉鎖中だった’11年4月14日に3日間の”東大研修”を実施した。

 

それから、被災した同校の”学習支援”をしたいと、松井教授や、東大OBで代々木ゼミナールの講師・藤井健志先生が、現役東大生まで引き連れて、訪れるようになった。さらに教授や官僚など、さまざまな東大OBらの講演も定期的に開催された。稲村君にとって、遠い存在だった東大が、どんどん身近になっていった。

 

「東大の学習支援では、勉強方法はほとんど教わっていません。勉強は教わるものではなく自分でやるもの。そのやる気を、支えてもらいました」(稲村君・以下同)

 

稲村君は、松井教授のいう”主体性”のある学び方も独自に追求。なんとノートを廃止し、代わりに職員室から印刷ミスをしたコピー用紙を集め、書いては捨てる勉強法を開発した。

 

「もともとノートを見直すような生徒じゃなかった。数学は、計算違いをしたら紙を捨て、次の紙でまた計算。英語などは、書いて書いて、その場で覚えて捨てました。テクニックより自分に合った勉強をすることの大切さを、身をもって知りました」

 

かつて自分を刺激してくれた東大生として、5月から早速、毎月相馬に通うという稲村君。相馬高校全体の学力を上げることが、次の目標だ。「震災を風化させないためにも、たくさんの人を相馬に連れてもいきたい」と笑顔で語った。

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