「女性は人生90年。“自分が認知症になったら”という視点で備えていれば認知症を恐れる必要はありません」

 

と語るのは「あい権利擁護支援ネット」代表で、(社)日本認知症ケア学会理事の池田恵利子さん。早めに備えれば家族や周りの負担も減らすことができる。そのため、今すぐできる3つの準備をしておこう。まず1つ目は「支援ネットワークに頼る」こと。(社)日本認知症ケア学会理事で、日本大学教授の内藤佳津雄さんはこう語る。

 

「認知症になると、すぐに家で暮らせなくなるイメージがありますが、そうではありません。早期受診と対応次第で悪化が防げます。今までの生活を継続できるように、ケアプランや自宅の環境を整えることが重要。まずは、地域包括支援センターに相談することをおすすめします」

 

「地域包括支援センター」は、市町村が運営、またはその委託を受けた法人。高齢者の総合的な支援を行うための場所だ。

 

「全国の市町村ごとにあります。介護保険の使い方や申請、高齢者の一人暮らし、高齢者虐待、自分が認知症なのかなど、どんな相談にも無料でのってくれます。保健師や看護師、主任ケアマネジャー、社会福祉士が在駐し、相談内容により、各専門家へとつないでくれます。ケアマネジャーと医師との連携もあります」(池田さん)

 

2番目の準備として「家族でもめないために」、財産管理等の代理人をはっきりさせること。

 

「家族間の財産管理を巡るトラブルも多い認知症。『成年後見人制度』は重症化する前に考えたい制度です。家族以外に最近は、弁護士、司法書士など、第三者への依頼も増えています。子供に頼む場合、相談せずに特定の1人に頼むと、財産分与などで後にもめる原因となります」(池田さん)

 

成年後見人制度とは、判断能力が十分でない人の、介護保険の申請、施設入所手続き、財産管理、必要な契約などを代理するもの。裁判所が決定する「法定後見制度」と、判断力が低下する前に、自分が後見人を選んでおく「任意後見制度」の2種類がある。

 

最後の3つ目の準備は「ケア費用を知っておく」こと。

 

「介護認定は、要支援1・2、と、要介護1~5の段階に分かれています。介護保険で受けられるサービスは、訪問介護、デイサービス、訪問看護、福祉用具レンタルなど52種類。自宅ではサービスを組み合わせて使います。費用は地域により少し違いますが、ある例を見てみましょう」(内藤さん)

 

要支援2(生活の一部に支援が必要、要介護への予防が必要)で、自宅で暮らしながら、生活の自立維持のための支援を受ける人がデイサービス(週に2回、送迎あり)を受ける場合。訪問介護(週に2回、ホームヘルパーによる生活支援)、訪問介護(週に1回、看護師が診療の補助と療養上の世話)のサービスも利用する。この例では、1カ月の介護保険サービスの自己負担は、約1万6千円の計算だ。

 

介護保険を使わず、昼間自宅に家政婦さんを1カ月頼むと、約50万円かかるという。

 

「地域で配布している『高齢者のしおり』を読んで、施設について勉強をしておくことも大事です。ここまで紹介してきたことができていれば、認知症は怖がる必要はありません。たとえ発症しても、あきらめないで対処してください」(池田さん)

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