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「介護せず資産のみに執着する実娘2人と違い、資産家女性に50年以上、献身的に仕えてきた。遺産で報おうとした心情は自然だ」

 

これは先月24日、97歳で死去した女性Aさんが書いた“遺産を家政婦に譲りたい”という遺言書について争われていた裁判で、原克也裁判長が下した判決文の一部だ。この判決により母親の死後、遺産から6千万円相当を持ち出していた実娘2人に対し、家政婦側に全額返還するよう命じられた。

 

“家政婦全面勝訴”というニュースが流れ、「家政婦が遺産を“全額相続”!?」と驚いた人も多かったこの裁判。渋谷リヒト法律事務所の菅野朋子弁護士が解説してくれた。

 

「今回の裁判の争点は、遺言作成時のAさんに認知症の兆候があったかどうか、ということです。このように、遺言能力の有無を争うケースが近年増加しています。65歳以上の高齢者が遺言を作成する場合は、医療機関で認知症の検査を受けて『遺言能力あり』のお墨付きをもらい、診断書付きの遺言書を作成しておくことが、大切な人へ財産を残すために必須となってきています」

 

そこで、菅野弁護士が「モメずに他人に財産を残す遺言書」を作るための5ステップを教えてくれた。

 

【1】弁護士に相談

「慣れていない方には難しい内容です。費用はかかりますが、自信がなければ相談するのをおすすめします」

 

【2】財産目録を作る

「貴金属、投資財も洗いだし、財産の保管場所も明記しましょう。最近はインターネット上だけで投資をしていて、遺族が気づかないままになるケースが増えているので要注意です」

 

【3】相続人・遺贈者の特定

法定相続人は配偶者と子どもだが、いなければきょうだいや親、さらに不在ならその子どもと、範囲は広がる。また、今回の事件のように、血縁がなくても大切な人を遺贈者として指定できる。

 

「最近は面倒を見てくれた人に譲りたいというケースが増えています。他人に財産を譲りたい場合は遺言でしっかり記しておくことが大切です」

 

【4】認知症のチェックテストを受ける

「高齢化が進むにつれ、今後はさらに『遺言能力の有無』を問われることが増えるでしょう。特に血縁のない人に遺産を残したい場合は、必ず診断書をもらっておきましょう」

 

【5】公証役場へ行く

自力で書いた「自筆遺言」は費用こそかからないが、形式の不備等で無効となる場合も。役場で作成した「公正証書遺言」のほうが有効性が高まる。

 

最後に“相続人側”の心構えを菅野弁護士はこう語る。

 

「今後は『介護をしてくれなかった』というしこりが相続トラブルに発展するケースがさらに増えるでしょう。相続人もダブルケアなどで介護できない事情がありますが、関係がこじれる前に、少しでもよい状態にできるよう、コミュニケーションを取りましょう。人間は“情”で動くもの。1本の電話が関係修復のカギとなる場合もあります」

 

トラブルを軽減するために、できることを今しておこう。