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(写真・AFLO)

細胞が不要なタンパク質などを分解して栄養源に再利用する「オートファジー」、その仕組みを解明した功績によってノーベル医学・生理学賞を受賞した大隅良典東京工業大学栄誉教授(71)。その妻・萬里子さん(69)は本誌にこう語る。

 

「夫はいい加減でずぼらなのに、どうして実験がうまくいくのか不思議でしたね。家の中だと脱いだものを片づけないし、靴下が片方ずつ違っていても平気。私の話に耳を貸さないので注意するのですが、何度言ってもダメなんです。だからもう『いい加減』ではなく『良い加減』だと思うようにしています」

 

興味を持ったら研究一直線で、家のことはほとんどお任せだという大隅教授。そんな彼の偉業の陰には、しっかり者の妻・萬里子さんの公私にわたる献身があった――。

 

もともと同じ東大大学院の先輩後輩だったという2人は交際を経て71年3月に結婚。大隅さんは26歳で、萬里子さんは24歳。互いにまだ大学院生の、いわゆる学生結婚。ほどなく子供を授かったが、萬里子さんは出産から2カ月で働き始めたという。

 

そんな彼女は家庭を支えただけでなく、夫の研究までもサポートしていたようだ。88年、大隅さんは世界で初めて「オートファジー」の機能観察に成功。そのころ、彼女は夫の実験室に出入りするようになっていた。

 

「最初はそんなにたいしたことだとは思っていなかったのですが、学界ではたくさんの方が寄ってきて『素晴らしい!』と言ってくれました。それでおもしろそうだと思って、一緒に研究をしてみることにしたんです」

 

仕組みの解明は、オートファジーができない変異株から遺伝子を採取することで突き止めていった。だがその陰には、仰天の事実が!

 

「変異株は14個取れたので、そこから遺伝子を採取していきました。でも実は半分くらいは私や学生たちが取ったんです。途中、ちょっとは協力していたということですね(笑)」

 

萬里子さんはそう謙遜するが、まさに夫婦二人三脚で挙げた成果。そんな妻へ、大隅さんが毎年忘れず続けてきたことがあったという。

 

「私は結婚記念日を忘れちゃって、いつも夫に怒られるんです。でも夫は毎年私にお花を贈ってくれます。私は白が好きなので白いバラをくれてね。年をとってきたら色がないと寂しいからと言って、最近はピンクの花をつけてくれるようになりました」

 

プレゼントには、結婚から45年間支えてくれた萬里子さんへの感謝の想いが込められていたにちがいない。

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