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いま注目の『もったいないアクション』をご存じだろうか。世界一の“残飯大国”である日本の食糧廃棄問題に焦点を当て、“問題なく食べられるけど傷がついたなどの理由で買い手がつかない食材”を美味しく提供するというもの。現在までに、テレビ東京系ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』など、テレビとラジオで30番組以上、紙媒体やWEBでは100社以上で取り上げられている新鋭のプロジェクトだ。

 

この『もったいないアクション』を手掛けるのは、設立からまだ4年半の株式会社エードット。社員の平均年齢は27歳。数十名の社員を率いる伊達晃洋社長(32)に話を聞いた。

 

■ネガティブをポジティブに変える

 

伊達氏は、’05年広告代理店である株式会社アーヴァンネット南十字社に入社後、2回の転職を経て’12年7月に株式会社エードットを設立した。

 

「当時は“店頭プロモーション会社”と打ち出していました。主に、スーパーの試食販売などに新しい取り組みを提案する仕事でした。前職が食品系に強いプロモーション会社だったので、そこで得た強みを生かして食品業界に特化するのがいいだろうと。食品のプロモーション業って、実はまだまだ古い体質が残っていて、そこで若者が独立するのは珍しい。そこも逆に狙い目だと考えました」

 

『もったいないアクション』の第1弾として‘15年1月に東京・丸の内の新東京ビルに『魚治』をオープン。“規格外の大きさ”“獲れすぎた”などの理由から、築地市場でまだ食べられるにもかかわらず買い手がつかなかった食材を活用している。構想から1年半以上かけて実現したという同プロジェクト。立ち上げのきっかけは、仕事中に聞いた“ある一言”だった。

 

「会社設立から1年が経ったころでした。あるPRイベントで、築地市場の仲買の方と仲良くなりまして。その方から『築地ってこんなにデカイけど、数%は売れ残って買い手がつかなくなっちゃうんだよ。すごくもったいないと思わない?』と聞いたんです。これはビジネスになると思い、すぐに『僕たちに店を作らせてください!』と企画書を持っていきました」

 

しかし、食品業界の概念を覆すプロジェクトの立ち上げは一筋縄ではいかなかったという。

 

「当初、風当たりはかなり強かったですね。『消費者に一級品でないものが売れるわけがない』って。『築地もったいないプロジェクト』という屋号も、『もったいない』というワードは飲食でタブーとされていました。でも僕としては『ネガティブなものは、実はポジティブにもなる』という考えを持っていました。なので、なんとか周囲を説得して屋号を決めました」

 

■なぜ起業を決心したのか

 

現在では食品だけでなく、鉄道やレジャー、スポーツ協会のプロデュースやテーマパークのPRを手掛けるなど幅広く事業を展開しているエードット。会社設立のきっかけをたずねると、「実は僕、高卒なんです」と伊達社長は語る。故郷・島根県の高校を卒業後、上京。清掃員やカラオケのアルバイトをしていたという。

 

「男3人兄弟の末っ子で、東京の専門学校に進学が決まっていました。でもある日、父親から『金がないから、進学は難しいかもしれない』と言われて。東京への憧れは強かったので、それでもいいから上京しようと決心しました。でも東京に着いた瞬間、明日からやることがないと気がついて。絶望しましたね(笑)。そこからはアルバイトで生活していました」

 

同年代の大学生たちの姿を見て焦燥感にかられたこともあったと振り返る。そして20歳のとき、アルバイトがきっかけで広告の世界に入った。

 

「清掃員のアルバイトをしていたときは毎日作業着を着て、50代くらいのおじさんたちと仕事をしていました。ランチはいつもファミレスで500円くらいのセットだったのですが、ある日、隣のテーブルで騒いでいた大学生の男女から冷ややかな目で見られて……。『俺、このままでいいのかな……』と焦りました。でもそのときの絶望感がバネになったと思います。20歳のときに広告業界へ入り、起業を考え始めたのは24歳くらいでした」

 

’12年、起業とともに第一子が誕生。現在は2児の父、今夏には第3子が産まれる予定だ。

 

「イクメンですか?いやぁ、まあ休日は一緒に遊ぶくらいですね(笑)。仕事がないときは子供といるようにしていて、公園にもよく行きます。4歳の男の子と2歳の女の子、3人目は女の子らしいです。たまに社員が家に遊びに来ることがあるのですが、ママチャリで迎えに行くとすごい違和感があるといわれますね(笑)。生活感ありすぎって(笑)」

 

家族との時間からアイディアを得ているのだろうか。同社には帰省費や両親のプレゼント代を補助する『親孝行制度』、美容費や会食費を補助する『自分磨き給』など一風変わった福利厚生がある。さらに驚くのは、社員の親に会いに行く“家庭訪問”をしているという点だ。

 

「社員の親御さんがOKしてくだされば、日本全国どこにでも出向いて食事をします。会社がまだまだ小さいので『こんな会社に就職して大丈夫?』というご両親の不安を取り払いたいなと。でも家庭訪問を始めてわかったこともありました。ふだんは親子で言えない本音を、僕を介して伝え合っているんです。それってすごくいいなって思います]

 

■株式上場を目標に日本を代表するプロデュース会社へ

 

「さぁもっと変わろう」をスローガンに、設立以来、売上、社員数が毎年おおよそ2倍のスピードで成長中。最近ではテレビCMの制作にも着手し、近い将来には株式上場も視野に入れているという。さぞかしハングリー精神旺盛に思えるが、伊達社長の口からは意外な言葉が飛び出した。

 

「“日本を代表するプロデュースカンパニーになる”というベースの目標はありますが、正直、それ以外はなんでもいいかなと思っています(笑)。社員が自らやりたいことに取り組んでいける環境を作りたい。事業の大枠から外れていなければ何をしてもいいと思うんです。会社が毎年成長していくように、中も常に変化するべきだと。最近では、スポーツメディアも作り始めました。2020年の東京オリンピックはもちろんですが、それ以降もスポーツは続いていくので“伸びしろ”があるなと。今夏から秋にかけてスタートさせる予定です。そんなふうに広告業界のトップを目指し、これからも挑戦を続けていきたいですね」

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