消費税増税が先送りになり、衆議院が解散。安倍首相の言う、「アベノミクスを問う選挙」が12月14日に行われる。私たちはアベノミクスを、どう評価すればいいのか?増税延期でどうなるのか?経済ジャーナリスト・荻原博子さんが語ってくれた。

 

「消費増税の先送りは、私は当然だと思います。今年4月に消費税が8%になって、家計にダメージを感じる方も多いでしょう。総務省家計調査でも、今年7〜9月の消費支出は前年比で5.3%減と、消費の冷え込みは明らかです。このうえ増税すれば、デフレ脱却などできません」

 

ただ政府は「’17年4月に景気に関係なく増税する」と言及している。

 

「消費者は次の増税に備え、少しでも蓄えようといっそう買い控えるでしょう。消費支出は低いまま、景気はよくなりません。増税先送りの意味がない、むしろ逆効果ではないかと思います。消費者が安心してお金を使えるように、『消費税増税は景気回復後に行う』べきだと、私は考えます。いっぽう、増税先送りで社会保障改革、特に年金や子育て支援などへの影響が危惧されます。今後の優先順位のつけ方などに注目を」

 

安倍首相は’12年12月の就任以来約2年間、アベノミクスを推進してきた。しかし今、成果が見えない。もっとも重要な第三の矢、成長戦略に、思い出せる施策や成果がない。当初は、新エネルギー構想などもあったが、結局、政府は原発の再稼働に向かい、成長産業は起こらなかった。

 

「安倍首相は、株価の高騰を成果と強調しますが、今の株価は実体経済とリンクしていません。株価の上昇が、景気の上昇にはつながらず、恩恵を受けたのは世界中の機関投資家と一部の富裕層だけ。これが成果と呼べるのでしょうか」

 

さらに、本当につらいのはこれからだと荻原さん。

 

「まず、今秋以降の急激な円安は、2〜3カ月遅れてお正月ごろから、モノの値段を押し上げます。物価はもっと高くなるでしょう。企業倒産の増加も心配です。今年1〜9月には円安が原因での倒産が、前年同期の2.4倍でした(東京商工リサーチによる)。来年3月の決算期には、消費税に関連した倒産が増えるでしょう」

 

これらがアベノミクスの結果だ。この選挙は本当に「アベノミクスを問う」だけでいいのか。荻原さんはこう言う。

 

「1人1人が、もっとも大切にしたい選挙争点を決め、各党の意見をしっかり見比べ、悔いのない選択をしましょう。日本の将来を決める大切な選挙です。どんなに選ぶのがむずかしくても、必ず投票に行きましょう」

経済ジャーナリスト
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