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7年8カ月も続いた安倍政権。それを継ぐ菅政権も高い支持率でスタートした。

 

9月10日の代表選で、新生・立憲民主党の新リーダーに選出された枝野幸男代表(56)。衆参合わせて150人の国会議員が所属する野党第一党だが、もう一つの選択肢になりえるのか? 新代表に、経済ジャーナリストの荻原博子さん(66)が切り込んだーー。

 

荻原「ちょうど枝野さんが党代表になった同じタイミングで、菅(義偉)さんが自民党の総裁になりました。驚いたのが、まだ何もしていないのに、菅内閣の発足時の支持率が史上3番目という人気の高さだったことです」

 

枝野「政治の世界にはご祝儀相場という言葉がありますし、7年8カ月も続いた安倍政権が終わり、国民のなかには変化を求めるニーズがあったのでしょうね」

 

荻原「菅さんとしては、人気があるうちに解散総選挙に持ち込んで、一気に票を取り込んでしまおうと考えてもおかしくないですね」

 

枝野「解散総選挙の可能性がもっとも高いのは今年12月だと考えています」

 

荻原「このコロナ禍で、暮らしをどう立て直すか、経済政策を注視している人は多いと思います」

 

枝野「私たちがやろうとしている1本目の柱は、落ち込んだ消費を刺激するために、年収1,000万円程度までの中間層の所得税を時限的に免除すること。さらに消費税も時限的に減税し、困窮している人へ例えば1人月1万円を定額給付します。この3つをハイブリッドに組み合わせて、冷え込んだ消費を戻したい。とくに、所得税を1〜2年間免除することで、給与所得者は年末調整で所得税分が戻ります」

 

荻原「それは景気を大きく刺激しますね。菅さんは消費税の減税は否定的でしたが、票集めのために、選挙前に消費税減税を打ち出してくる可能性もありますね」

 

枝野「菅さんが本気でやろうと思っているなら、一緒にやりましょう、と提案するつもりです。景気回復のためには選挙前に決着しておきたいくらいです」

 

荻原「安倍政権では、大企業が潤えば、国民や中小企業にも恩恵が届く『トリクルダウン』が起きるとして、法人税を3回下げました。その結果、大企業は内部留保が200兆円も増えましたが、結局そのお金は下まで届きませんでした。枝野さんはどうやって賃金を上げるつもりでしょうか?」

 

枝野「日本は社会主義ではないので、国が民間企業に『給料を上げろ』と命令はできません。でも、公の仕事をしている人の給料はすぐに上げることができる。公の仕事といっても、公務員に限らないのです。保育、医療、介護、教育などに関しては、民間でやっているところも多いですが、報酬基準を引き上げることで、直接に近い形で給与を上げることが国の力でできるんですね」

 

荻原「保育や介護など、みんなが必要としているサービスは人手不足にもかかわらず低賃金。とくに介護職の給与は、通常より1割低いと言われています。そういった人たちを底上げしていくわけですね。給料が上がれば、人手不足も解消するかもしれません」

 

枝野「その流れを中間層まで押し上げていくのが狙いです。これまで過度な公務員バッシングの影響もあって、公の仕事をする人の賃金が安く抑えられてきました。その結果、低いほうに引き寄せられるように、みんなの給料も上がらなかったのです」

 

荻原「では、未来に向けての成長戦略はどうでしょう。先日、日立製作所がイギリスの原発の建設事業から撤退しましたが、これで原発3社が輸出事業につぎ込んだ2兆円がすべてパーになりました」

 

枝野「将来的に、日本は自然エネルギー立国を目指すべきだと考えています。太陽光、風力の再生可能エネルギーはかなり普及しましたが、それ以外にも波力、地熱、水力、バイオマスなどあらゆる自然エネルギーがこの国にあります。さらに断熱などの省エネ技術も。これらをセットにして、世界中に売っていくのが3本目の柱です」

 

荻原「そんな3本の柱には、何かネーミングがあるのですか?」

 

枝野「まわりからは『エダノミクス』としようと言われています。『スガノミクス』よりも語呂がいいと。自分で言うのは僭越ですが(笑)」

 

荻原「いいじゃないですか。『エダノミクス』を進めてくださいよ。あと気になるのが、『女性活躍』です。菅内閣では、女性閣僚が安倍政権時よりも少なくて、何も進んでいないのを感じました」

 

枝野「僕は『女性活躍』という言葉自体に違和感を覚えています。女性でも男性でも、同じ条件で希望する生き方を選べることが大事です。別に活躍しなくても、安心して暮らしていければいいという人は男性でも女性でもいるはずです。じつは27年前から言っていることですが、そのためには選択的夫婦別姓制度が必要だと思うんです。もちろん、夫の氏を名乗りたい人はいいのですが、不便だ、嫌だという人たちにはその権利を認めてよ、ということ。昭和の古い価値観を壊さない限り、自分の生き方を自由に選択できるような社会にはならないと思っています」

 

「女性自身」2020年10月13日号 掲載

経済ジャーナリスト

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