心臓病で旅立った翔平ちゃんの母明かす大谷翔平との“キャッチボール”
画像を見る 「翔平は抱っこが好きで、よく笑う男の子でした」(静葉さん/家族提供)

 

■「あったかいね」、翔平ちゃんを優しく抱きしめた大谷

 

大谷選手が大阪にある国立循環器病研究センターを訪れたのは’19年1月5日。翔平ちゃんは1歳6カ月になっていた。

 

大谷選手の印象について静葉さんはこう語る。

 

「身長は193センチもあります。メジャーリーガーですし、変な言い方ですが、体もゴツゴツしていて、威圧感も受けるのではないかと想像していたのです。でもスーツ姿だったせいもあるかもしれませんが、実物の大谷選手は“優しいお兄さん”という感じで、すごく柔らかな、こちらが安心してしまうような雰囲気だったのです」

 

ニコニコと笑いながら翔平ちゃんのそばにやってきた大谷選手。

 

「今日は本当にありがとうございます。この子が翔平です」

「翔平です。同じ名前だねぇ。元気?」

 

翔平ちゃんのほっぺを指でプクプクとしてくれる姿からも大谷選手の思いやりが伝わってきた。静葉さんを感激させたのは、翔平ちゃんに優しく接してくれたことだけではない。大谷選手は静葉さんや太志さんに、いろいろな質問を投げかけたのだ。

 

「ご両親は毎日病院で付き添っていらっしゃるんですか? そうですか、うーん、大変ですね」

 

“この人は、翔平の病気を理解しようとしてくれている”、大谷選手の真心が静葉さんの胸を打った。静葉さんは意を決してお願いすることにしたという。「よかったら抱っこをしてくれませんか」と――。

 

「翔平は心臓移植手術が成功したとしても、それで終わりではありません。健康な子となんでも同じことができるようになるわけではないのです。

 

息子が成長したときに、『あなたのために、素晴らしい選手がお見舞いに来てくれて、抱いてくれたんだよ』、そう言ってあげたかったのです」

 

そんな静葉さんの思いが伝わったのかもしれない。「えっ、僕が抱っこしてもいいんですか?」、大谷選手は、看護師さんにサポートされながら、翔平ちゃんを抱きしめ、こうつぶやいたのだ。

 

「あったかいね……」

 

翔平ちゃんも大谷選手の腕のなかが気に入ったのか、ずっとおとなしくしていたという。

 

大谷選手はプレゼントを用意してくれていた。真っ白なボールに《翔平くんへ》という名前とサインを書くと、翔平ちゃんの手に、ちょこんとのせてくれた。翔平ちゃんにとっては初めての革の手ざわりだったのだろう。興味深そうにボールをじいっと見つめていた。

 

そんな翔平ちゃんのほうへ大谷選手が片手をゆっくりと差し出すと、まるでその瞬間を待っていたかのように、翔平ちゃんがぽいっとボールを手放したのだ。

 

「おおっ、キャッチボールだ」

 

大谷選手がボールを受け止めたとき、部屋のなかでそんなどよめきが起こった。

 

一瞬、驚いていた大谷選手はニコリと一言、「野球しよっか!」。ふんわりとした声が、その場にいた人々の心のなかもあたたかな空気で満たしていった――。

 

この後、静葉さんはこのキャッチボールを数えきれないほど何度も何度も思い出したという。

 

「息子の人生でたった一度のキャッチボールでした。私も夫も、あの幸せな日のこと、そして奇跡の瞬間を生涯忘れることはないでしょう」

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