■「やるならちゃんとやりましょうよ」
実は当初、こども庁に対して賛成の立場をとっていた泉市長。「先頭を切って応援団をやっていましたよ」という。
「でも、途中から『えー!』ってなってきてね。今は子ども基本法案も子ども・子育て法案も両方反対。むしろ、“しない方がいい”とすら思っています。
まず文科省含めて、組織改変をしないと意味がありません。しかもこども家庭庁は方針も不明確で、財源も不十分。ちゃんとお金を使ってやりましょう。そうでないと人は動きませんから。
先々のことを思うと『このタイミング逃すともったいないよ』と言いたい。単に“家庭”って文字を入れても、何も変わりませんよ」
泉市長が就任する前、明石市の子供に関連する予算は約100億円だった。ところが、泉市長は倍の200億円以上を注ぎ込むことに。こども部門の職員数も39人から135人に増やした。泉市長はこう明かす。
「子供を守るためにはお金が必要です。こども家庭庁は“金は増やさん人も増やさん”ですから、うまく機能するわけないんですよ。これでは国民も冷めてしまいますよね」
本誌の取材直前、日本記者クラブでこども家庭庁に関する講演を行ない、「縦割り行政が残ったままなら、むしろつくらない方がいい」と強く非難していた泉市長。「さっきも言ってきたんですけど、やるならちゃんとやりましょうよ。もったいないから」と訴える。
「未就学児には4つの種類があります。保育所や幼稚園、こども園に行っているか。もしくは在宅しているか。そしてこれらの管轄は、みんなバラバラなんです。保育所と在宅は厚労省が担当で、幼稚園は文科省。こども園は内閣府と。3省庁に分かれたまま、ずっと解決されて来なかったんです。そして、こども家庭庁に文科省はほとんど関わっていません。
省庁の縦割りによって現場も混乱しているのに、利権という“しがらみ”もあります。保育園は保育協会、幼稚園は幼稚園協会。それに属する国会議員もいる。既得権益が蔓延して、改善しようにもどうしたって動かないわけです。『いつまで、そんなことやってまんねん』っていうのが本音です」