除草剤が埋まる現場(写真:朝日新聞) 画像を見る

全国の国有林に埋められている猛毒ダイオキシンを含む除草剤。近年、激甚化する豪雨災害によって流出への懸念が高まっている。どのような危険性があるのか、専門家に聞いたーー。

 

19日、日本気象協会による梅雨入り予想が発表された。今年の梅雨入りは例年より早く、九州南部では5月27日になる見込みだという。大雨のシーズンを迎えるなか、気がかりなのはこのところ毎年のように各地で起こる豪雨災害だ。

 

昨年7月には、豪雨によって静岡県熱海市の伊豆山地区で大規模な土石流が発生。死者26人、行方不明者1人の大惨事となった。また、一昨年7月に起きた「令和2年7月豪雨」では、全国的に河川の氾濫や土砂災害が発生。甚大な被害をもたらしている。

 

実は、こうした豪雨とともに、猛毒がばらまかれる危険性が懸念されているという。

 

「もう50年も前から、15道県42市町村の山中46カ所に有毒な除草剤が、26トンも埋められているんです。この除草剤はベトナム戦争の際にまかれた枯れ葉剤と同じ成分で、猛毒のダイオキシンが含まれているんです。これまでの調査で、すでに基準の17倍のダイオキシンが地中に漏れ出ている場所もあることがわかっています」

 

そう警鐘を鳴らすのは、北九州市立大学の職員で『真相・日本の枯れ葉剤』(五月書房)などの著書もある原田和明さん。

 

この除草剤は、“2・4・5T系”という種類。ベトナム戦争ではアメリカ軍によって同種の枯れ葉剤が散布され、先天異常を持つ子どもや小児がんの増加など深刻な健康被害が報告されている。

 

しかし、そもそもなぜそんな毒物が日本全国の山中に埋まっているのだろうか。前出の原田さんは、経緯をこう話す。

 

「林野庁は’60年代後半から’70年にかけて、国有林の除草のために、全国で2・4・5T系の除草剤を散布していました。アメリカでは’69年に動物を用いた研究で胎児に奇形が見られたほか、発がん性なども指摘されていたのに、日本では散布が続いていたんです」

 

アメリカからの報告を受け、日本でも’71年4月に2・4・5T系除草剤は使用中止になった。しかし、それによって多くの除草剤が余ってしまうことになったのだ。

 

次ページ >過去には除草剤が流出した例も

【関連画像】

関連カテゴリー: