元統一教会信者で、脱会を支援する牧師が語る“ハンカチ売り”の日々と贖罪の気持ち
画像を見る 「旧統一教会に自浄作用は期待できない。ただ、そこにしか居場所がない人も」と竹迫さん

 

■売り上げは子どもたち支援にと嘘をつき500円ほどのハンカチ3枚セットを3千円で販売

 

「戸別訪問しハンカチを売るんです。本当は500円ほどのハンカチ3枚セットを3千円で。『売り上げは恵まれない子どもたちの支援に』と噓をついて。完全な詐欺です」

 

ところが、竹迫さんはキャラバンのさなか転倒。左足首を骨折し、帰京を余儀なくされる。

 

「池袋にあった旧統一教会の病院で治療を受けるはずでした。でも、内部でもハンカチ売りは極秘扱いだったので、その露見を恐れたんでしょうね。『自宅で治してこい』と言われ、帰されたんです」

 

数カ月ぶりに帰宅すると、両親のほか、旧統一教会の内実に明るい人たちが集まっていた。

 

「家出している間に両親は、脱会させる準備を重ねていた。足を負傷し自由に動けない私は1週間、組織のスキャンダルが書かれた記事や資料を見せられながら、缶詰め状態で説得を受けました」

 

それでも、心は動かなかった。

 

「スキャンダルを見せつけられても『だから何?』と。世界を救うには、時に違法行為だって必要だろ、ぐらいの気持ちでした」

 

■「やめる」と噓をついて教団に戻るつもりが“スパイ扱い”されて、暴力を受けた

 

組織から「きつい説得を受けたら『やめる』と噓をついて逃げ出せ」とも教えられていた。

 

「私も『やめる』と言いました。両親から『友達はどうするんだ?』と聞かれてしまって」

 

じつは竹迫さん、高校の同窓生を7人、勧誘していた。

 

「仕方なく『彼らにもやめるよう勧める』と答えると、私を単独で行かせることを不安視した両親が、牧師を同行させた。監視役ですね」

 

松葉杖をつきながら、牧師を伴い、友人宅を回った。

 

「表向きは脱会しても、隠れキリシタンのように信仰を続けようと思っていた。でも、監視役の手前、友人たちにはそうも言えず……」

 

友人のなかには牧師が見せた資料を目にして、ショックを受ける者もいた。彼らは竹迫さんの偽りの説得に、次々と折れていった。

 

「そのうちの1人がビデオセンターに電話してしまった。『竹迫が牧師を連れ説得に来たのでやめます』と。すると、旧統一教会では『竹迫が裏切った』という話になって」

 

本心ではやめるつもりはないのに、家には脅迫まがいの電話が。そこで竹迫さんは、釈明に向かう。

 

「でも、旧統一教会の建物の手前で、信者たちに取り囲まれ、杖を取り上げられ、路地裏に引っ張り込まれて。『スパイは帰れ!』って腹を3回、蹴られました」

 

自身が暴力の標的になって初めて、竹迫さんは、なぜ社会が彼らを危険視するのかを「身をもって知った」のだった。信者となって1年8カ月がたった’86年、竹迫さんは19歳で脱会に至った。

 

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