10月12日に運転期間の20年延長が申請された川内原発 画像を見る

福島第一原発事故を機に制定された原発運転期間を原則40年・最長60年とするルール。そのわずか11年後の今、規制の撤廃が行われようとしているーー。

 

「再生可能エネルギーと原子力はGX(グリーントランスフォーメーション)を進めるうえで不可欠だ」

 

今年8月、GX実行会議で、電力不足への対応や脱炭素社会の実現にむけて原発の必要性をこう力説した岸田文雄首相(65)。

 

会議で岸田首相は、次世代革新炉の開発・建設の推進に加え、現在「原則40年・最長60年」とされている原発の“運転期間の延長”を検討することを指示した。それを受け経済産業省は、10月5日、60年を超えて原発の運転を可能にする法整備を行うと表明。原発の稼働期限を事実上“撤廃”するとした。この方針には、政府から独立し、原発を規制する立場にある原子力規制委員会の山中伸介委員長までもが、容認する姿勢を見せている。

 

■年数を経るとともに原子炉は劣化する

 

「そもそも、『原則40年・最長60年』というルールは、福島第一原発事故のあと、同じような事故を繰り返さないために、安全規制の一環として原子炉等規制法を改正して定められたものです」

 

そう解説するのは、原子力規制を監視する市民の会代表の阪上武さん。

 

「ところが、規制する立場である規制委員会の山中委員長は、資源エネルギー庁が60年を超える原発の運転を可能にするよう要求したのに対し『運転期間については、利用政策側である経産省の判断だ』として、原子炉等規制法から、この条文を削除する形で容認してしまった。これは非常に問題です」

 

原発を推進する側の経済産業省がルールを定めるとなると、安全性よりも電力会社に都合のよいものになりかねない。

 

現在国内で建設済みの原発は33基。それらのすべてが、’50年までに稼働40年を迎える。

 

条文が削除されることで、老朽化した原発が日本中で当たり前に稼働するリスクは、いかほどか。

 

元三菱重工の技術者で、伊方原発3号機の建設機器班長を務めた森重晴雄さんは、こう指摘する。

 

「第一に挙げられるのは、中性子線が照射することによる原子炉の脆化です。原子炉は、炭素鋼という200mm厚の鉄板で作られているのですが、炭素鋼は中性子線に弱い。そのため長年、照射され続けることで金属が脆くなるのです」

 

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