運転期間「上限撤廃」で高まる老朽原発の“放射能漏れ”リスクを専門家が警鐘
画像を見る 原子力規制委員会の山中伸介新委員長

 

■甘い耐震基準で作られた原発たち

 

加えて、前出の森重さんは、「型が古い原発は、耐震に関しても致命的な欠陥がある」と指摘する。

 

「日本は近年、地震の活動期に入っています。40~50年前に原発が製造され始めたころは、いまほど大きな地震もなかったので、そもそも耐震基準が甘いのです」

 

なかでも、東日本に多い“沸騰水型”の原発は要注意だという。

 

「沸騰水型は、ペデスタルと呼ばれる不安定な脚立のようなものの上に大きな原子炉を乗せているので、とくに揺れに弱い。福島原発事故のあと耐震基準が引き上げられ、新基準に合格した原発のみ再稼働されていますが、それでも加圧水型の高浜原発で、550ガルから700ガルに引き上げられたにすぎません」

 

ガルとは、地震の大きさを表す単位のひとつ。最大震度6強を記録した新潟の中越沖地震では、柏崎刈羽原発3号機で設計時の想定834ガルをはるかに上回る2千58ガルの揺れを観測し、建設時の地震想定の甘さが露呈した。これらを考慮すると、700ガルというのは心もとない数字に思える。

 

「さらに耐震評価では、原子炉の上部で原子炉の横ブレを止めるスタビライザーという部分についての耐震評価が公開されていません。この評価を行うと耐震基準に満たないことが明らかになってしまい、再稼働できないからです」

 

つまり、極めてずさんな耐震構造のまま、放射性物質が漏れ出す可能性のある老朽原発を動かそうとしているのだ。

 

岸田首相は、40年ルールを取り払う理由のひとつとして「イギリスやフランスなど諸外国では運転期限がない」ことなどを挙げている。しかし、原子力規制委員会の前委員長・更田豊志氏は「地震ひとつとっても海外とは置かれている状況がまったく違う。あまり海外の状況にひきずられるべきではない」と言及していた。

 

日本における原発稼働のリスクについて、結論ありきではない、真摯な議論が求められている。

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