「6月に詰む」発言で話題・専門家語るナフサ危機「『どこが詰んでいないのか、逆に聞きたい』というのが正直なところ」
画像を見る 再来年3月末まで「石油の安定供給が可能」と主張してきた高市首相(写真:本誌写真部)

 

■ナフサ不足は本当に「目詰まり」なのか

 

では、「ナフサは足りている。問題は目詰まりだ」と高市首相が繰り返し説明してきたナフサ不足の実態はどうなのか――。

 

「石油統計を見ると一目瞭然です。昨年4月のナフサの輸入量は196万トン、国内生成分が117万トンで、合わせて約300万トン規模の販売ができていました。ところが今年4月は、輸入が110万トンまで落ち込んでいます。前年比でマイナス43.7%です。さらに国内精製分も製油所の稼働率低下の影響を受けて、前年比で8割弱の水準まで落ちています。その結果、ナフサから生産されるトルエンやキシレンなどの化学原料の供給量も大きく落ち込んで、昨年の3分の2程度にまで縮小してしまっているんです」

 

トルエンやキシレンは、入手しにくくなっているシンナーや塗料、インクなど、石油化学製品の原料だ。

 

「つまり、ナフサの供給が不足したからこそ、市場に出回りにくくなっているわけです。ですから、政府が数字を示さずに『足りている』『目詰まりだ』と説明していることについても、私は非常に疑問を持っています。5月の供給は、多少改善したという話は業界関係者から聞いていますが、まだ統計が出ていないので判定できません」

 

■「6月に詰む」は現実になったのか

 

境野さんは、イラン戦争が始まった当初から、政府の楽観的な見通しに疑義を呈してきた。4月に出演した報道番組では、「今の状況が続けば(ナフサ不足により)6月には日本は詰む」と発言し、高市首相自らXで「事実誤認」と火消しにまわる出来事もあった。

 

すでに6月半ばにさしかかっているが、境野さんは現状をどう見ているのか。

 

「残念ながら、まさに“詰む”状況になったと思っています。一部の人たちは『詰む』という言葉だけを切り取って面白おかしく騒いでいたようですが、私はずっと、需要と供給のバランスが崩れて、一部の産業に重大な影響が出ると言い続けてきました。」

 

「需給のバランスは崩れ、供給不足の影響はすでにさまざまな業界に広がっている」と境野さん。

 

「カルビーが包装仕様を変更したり、シンナーや塗料を使う事業者の廃業や倒産が増えたり、納期遅延や出荷遅延が発生したりしています」

 

さらに、東京商工リサーチが今月上旬に実施したナフサ供給に関するアンケート調査では、『調達量と価格のいずれか、または両方に支障がある』と回答した企業が85.0%(5,326社)に達しています。規模別に見ても、大企業が86.1%、中小企業が85.0%とほぼ差はなく、企業規模を問わず幅広い業種で影響が広がっているのです。こうした状況を見ていると、『どこが詰んでいないのか、逆に聞きたい』というのが正直なところです」

 

16日、米国とイランが戦闘終結の“覚書”を交わしたことが報じられた。しかし、米国防総省は、イランとの戦闘が終結した場合でも、「機雷の完全除去や安全確認の完了には約6カ月を要する」と発表している。予断を許さない状況を前に、政府は今何をすべきなのか――。

 

境野氏は「まず必要なのは需要の抑制だ」と指摘する。

 

「限られた資源しかない以上、『このままでも大丈夫です』と楽観的な説明をするのではなく、できるだけ大切に使う方向に政策を持っていくべきです。資源を海外に依存する日本としては、本来それが基本的な考え方のはずです」

 

さらに問題視するのが、ガソリンへの補助金政策だ。

 

「補助金で消費を促進すると、石油元売りは利益率の高いガソリン生産を優先します。そうなると精製設備の運用もガソリン寄りになり、その分ナフサの生産量は下がってしまいます」

 

境野氏によれば、ガソリンとナフサは一定のトレードオフの関係にあり、ガソリン生産を増やせばナフサの供給量は減少する。そのため、現在の政策は結果としてナフサ不足を悪化させる可能性があるという。

 

「本来なら、限られた資源を何に優先して使うのかを政府が示すべきです。医療なのか、物流なのか、生活必需品なのか。優先順位を決めて政策を進める必要があるでしょう」

 

供給不安をめぐる議論は、今後も続きそうだ。

 

画像ページ >【グラフあり】ナフサと、ナフサから生産される化学原料の前年との比較(他1枚)

出典元:

WEB女性自身

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