「今年になって登校中の学童の列に車が突っ込み、幼い命が奪われるという痛ましい事件が全国で相次ぎました。こうしたニュースを見聞きするたびに、僕は本当に悔しくてしょうがないんです」

そう話すのは、5年前、当時10歳だった長女・えみるさんを交通事故で失った風見しんごさん(49)。風見さんは、何の落度もないのに、ルールを守らないドライバーに突然命を奪われることは”事件”であり、”犯罪”だと語る。愛娘を亡くしてから5年、一家は癒えぬ悲痛に苦しみ続けている。

「事故の後、現実を受け入れることができずに、僕たち夫婦はパニックになって長女のことばかり考えていました。二女のふみねは、当時まだ3歳。それでも親や周りの大人たちの様子を、ものすごく敏感に受けとめて生きているんですね」

姉の死後、こんなエピソードがあったと風見さんは振り返る。

「お悔やみの言葉をかけにきてくださったよそのおばあちゃんが、ふみねに『お名前は?』と聞いたんです。すると『えみるです』と言い張るんです。あとで聞いたら『お姉ちゃんがいなくなってからパパとママは泣いてばかりいる。私が”えみる”になれば、パパもママも泣かなくていいでしょ?』と言うんです。4歳になるちょっと前でした」

そんな二女・ふみねちゃんもいまは9歳に。しかし、お姉ちゃんとの思い出が蘇るのか、親子3人で外出した先で仲よく遊んでいる姉妹を見かけると突然泣きだすことがあるという。現在、風見さんは車を運転する機会が以前の10分の1に。仕事やプライベートで外出するときは電車やバスを利用しているそうだ。自分が車を運転している目の目にえみるさんが出てきて、彼女をひいてしまうという悪夢にうなされることもあるという。

「いまでも毎晩ベッドに入って目を閉じると、最初に事故の現場の映像が出てきます。僕が現場に駆けつけて目にした光景が……。家内も同じだと言います。でも、いまは『これではいけない。前向きに生きよう』と心に決めました。えみると天国で再会したとき、『パパ、よく頑張ったね』と言ってもらえるようしっかりと生きていかなければいけない、と思うようになったからです」

愛娘の突然の死を経験してわかったのは“あたりまえの日常”のありがたさだ。

「いまは『いってきます』『ただいま』という毎日があれば、それだけで満足です」

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