昨年12月5日に、急性呼吸窮迫症候群のため57歳で亡くなった歌舞伎俳優・中村勘三郎さん。その勘三郎さんと30年来の親交があり、最期を看取った劇作家の野田秀樹さん(57)が、親友の知られざる素顔を語ってくれた。

「とにかく、真っすぐなヤツなんです。新宿の中華屋さんで僕らが先に飲んでて、アイツが遅れて来たと思ったら、靴に生乾きのコンクリートがびっしり。『どうしたの?』『いや、そこ、道路工事してて』って。避けてくればいいじゃないの、あなた(笑)」

きっと、一分一秒でも早く野田さんたちと飲みたかったのだ。だから、少しの回り道もしたくなくて、一直線にやってきた。

「たぶん、そうでしょう。いまも新宿のあの道路には、中村勘三郎の靴跡がくっきりと残ってますよ(笑)。あとは、月見て泣いたりね。ベロベロに酔ってトイレから出てきたと思ったら、いきなり道端にしゃがみ込んで夜空を見上げて、『お月さまはきれいだな』と、ポロポロ泣き出す。そういうロマンチストでした」

共に見上げた夜空を思い出したのか、野田さんの声がくぐもる。

「月見て泣くなんて、なんだか、青春ドラマですよね。そうだ、青春ドラマという言葉が的を射てるかもしれない。アイツといると、たしかに、青春ドラマを一緒にやってるような瑞々しさがあったんです」

親友の死に対して、まだ現実感がないと野田さんは言う。

「こうやって笑える話をしているとい、どっかにいるアイツも一緒に笑っている気がする。そして、いつもの口癖で『大丈夫?』とか言いながら、また現れそうに思うんです」