「猿翁さんは中車(香川照之)、團子と親子3代で新しい歌舞伎座の舞台に立つことを励みに治療にあたっていましたから、それが実現できて本人もとても喜んでいました」(歌舞伎関係者)
3月28日午後、落成なった東京・歌舞伎座で行われた『古式顔寄せ手打式』。緞帳が開くと、舞台中央には椅子に座っている羽織袴姿の市川猿翁(73)がいた。脳梗塞と肝機能障害、軽度のパーキンソン病の症状も出ているという猿翁の背後には、長男の香川照之(47)、さらにその後方に孫の市川團子(9)の姿もあった。
「黒衣に付き添われた猿翁さんの左手はまだ不自由のようにお見受けしましたが、表情はとても晴れやかでした。中車さんも時折、とても嬉しそうに微笑んでいましたね。猿翁さんは1月26日、大阪・松竹座の千秋楽に立ったのが最後ですから2ヵ月ぶりの舞台でした」(前出・歌舞伎関係者)
この前日には総勢62名の歌舞伎役者が東京・銀座をパレードした“お練り”が行われた。この様子を猿翁は入院する病室で見守っていた。
「熱狂する人々の姿を見た猿翁さんは『ぜひ手打式には出たい!』と孫のためにもと気持ちを強くしたそうです」(前出・歌舞伎関係者)
3月28日、入院中の病院から手打式に出掛ける猿翁の姿を目撃した。彼の付き人が何度も車と病室を往復し終えた最後に車椅子に乗った猿翁が出てきた。柿茶の格子柄の羽織と淡い水色の和服に眼鏡姿。昨年の襲名興行時よりだいぶ痩せて見えたものの、手にしっかりと握られた数珠が彼の強い意志を物語っていた。猿翁は式終了後、病院に戻り、わずか150分間だけの一時外出だった――。