連載第24回となる『中山秀征の語り合いたい人』。今回のゲストは、常に漫画業界の第一線を走り続け、多くの人々を魅了するストーリーを紡ぎ出す浦沢直樹(54)。女子スポーツもの、ミステリー、SF、サスペンスなど、作風は作品によってまったく違う。1億冊以上を売った天才漫画家の人物像に迫る!
中山「浦沢作品は長年多くの人に愛されていますよね。ご家族も浦沢先生の作品をお読みになりますか?」
浦沢「妻はよくチェックしてますよ。絵が荒れたり、描いてるうちに細かくなりすぎちゃったりすると、『最近、絵が変だよ』『顔の線が多すぎ』とダメ出しが……(笑)。もうね、担当編集者は僕に言ってくれないんですよ。でも、妻は『もっとシンプルに』『今週号のあのコマ、変な顔』って(笑)」
中山「奥様のそういう意見って、受け入れるんですか?」
浦沢「自分でも薄々わかっていたことを指摘されるんですよ。『うわっ、バレたか!』って感じなんです。妻に『やっぱりわかっちゃったかー』って言うときもあります(笑)」
中山「ずっと近くにいるからこそわかることですよね。奥様は大事な存在ですね」
浦沢「ただ、中学3年生の娘はまだ僕の作品を読んでいないと思いますね。今は自分好みの少女漫画をよく読んでいます。父親が漫画家という仕事をしているのはうれしいみたいですけどね。たまに、『これ、読んでおいたほうがいいよ』って最近はやっている少女漫画を渡されます。
本宮ひろ志さん(『サラリーマン金太郎』などの作者)の娘さんも僕の『MONSTER』という漫画を読んで、『お父さん、これ読んだほうがいいよ』って薦めてくれたらしいんですよ。娘さんが『どうだった?』って聞いたら、『おう、俺の次に面白いな』って(笑)」
中山「でも、ほかの作品を読むくらいなら、俺の作品を読めっていうことはない?」
浦沢「全然ないですね。今は娘に読まれていないほうが気持ち的にはラクかな。娘がオススメの漫画を紹介してくれると、今の中学3年生の女子が何を面白がっているか、何がはやっているかがわかる。ありがたいことですよね。リアルな生の情報ですから、作品にも生かされますしね」