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(ちびまる子ちゃんランドにて 西久保瑞穂さん提供)

「彼女はずっと『病気のことはあまり人には言わないでね』と言っていました。親族に打ち明けたのも、本当に最近のことだったんですよ」と語るのは、アニメーション監督の西久保瑞穂さん(63)だ。

 

西久保さんの妻で声優の水谷優子さんが、乳がんで亡くなったのは5月17日。51歳の若さだった。水谷さんは’90年からずっとアニメ『ちびまる子ちゃん』で“お姉ちゃん”・さくらさきこの声優を務めてきた。

 

水谷さんは’85年に声優デビュー。’88年に『エースをねらえ!2』の岡ひろみ役で、初めて主演に抜擢された。

 

「めいっぱい叫びながらテニスをする主人公に入り込みすぎて、優子は喉を枯らしちゃったんです。その仕事の直後に入っていたのが、僕が手がけていた『天空戦記シュラト』の収録でした。声を枯らした声優に来られても困るのですけどね(笑)。彼女はそんな一途な性格でした」(西久保さん、以下同)

 

2人が結婚したのは’94年11月19日。西久保さんが41歳、水谷さんが30歳のときだった。声優歴31年の水谷さんは、数多くの役を演じてきた。

 

「『ブラックジャック』のピノコも長いし、他に長くやっているキャラがいくつかあります。長く演じた役にはどれにも愛着を持っていましたが、『ちびまる子ちゃん』のお姉ちゃんは、いちばん自分の地声にも近いし、キャラクター的にも演じやすかったようです。自分のなかの厳しい部分を、わざと出して演じていたのでしょう」

 

この数年は人知れず乳がんと闘ってきた水谷さん。最近では、めまいなどにも苦しめられていたという。

 

「僕も時間があるときは彼女を現場に連れて行っていました。車から降りた彼女を、今度はマネージャーさんが、スタジオに連れていってくれていたんです。それまでよろけていた彼女が、スタジオに入るとシャキッとなって。仕事なので無理して頑張っていたのでしょうが、その後に体調を崩すことも増えてきました」

 

水谷さんが『ちびまる子ちゃん』の最後の収録に挑んだのは4月22日のこと。その日も現場へは西久保さんが送っていった。

「吐き気もあったので、洗面器を持って移動していました。ほかならぬ本人の意志でしたし、私も応援していましたが、現場のスタッフの皆さんも、いろいろフォローしてくれていたようです。かなりつらかったようですが、彼女も『できた』と言って、戻ってきました。その日の収録では、お姉ちゃんがクローズアップされるエピソードもあり、セリフも多かったから、本人も喜んでいたと思います。でもまさか、あの日がちびまる子の最後の収録になるとは、彼女も私も思っていませんでした」

 

水谷さんの体調が急激に悪化したのは、その1週間後だったという。

 

「病室に台本などを持ち込んでいて、本人としては仕事を続けるつもりだったんですね。でも、さすがに体調がかなり悪くて、そこまではできませんでしたが……。特に彼女も意識していなかったようですが、『仕事に行きたい』が最期の言葉になってしまいました。入院期間は2週間ちょっとでした。まぁ逆に言うと、亡くなる2週間前まで仕事をしていたわけですからね。僕なんかより全速力で突っ走って……、本人としては満足しているのではないでしょうか」

 

水谷さんが喜んでいたという“お姉ちゃんのセリフが多いエピソード”は、5月29日に放映される予定だ。

 

「優子が毎回録画はしているのですが……。最後の放送は、できればリアルタイムで見てあげたいと思っています」

 

そんな西久保さんの言葉には、声優として命を燃やし尽くした妻・水谷さんへのいたわりが込められていた――。

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