連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第12週は、編集者としての一歩を踏み出した常子が、人生最大のパートナーと出会う新展開。常子は、真面目で堅物の編集長・谷(山口智充)や、女性好きでプレイボーイな記者・五反田(及川光博)に、一から雑誌作りを教わる。会議中、谷からメモを取るばかりでなく、発言するよう言われ、驚く常子。「女がしゃしゃり出て、意見を出していいんですか?」と尋ねると、五反田は「ここでは男も女もない。君の考えを素直に言っていいんだよ」と微笑む。常子は、2人の男女分け隔てない態度に深い感銘を受けるのだった。

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一方、祖母・滝子(大地真央)は青柳商店の経営難の心労から病を患い、床に伏せる日が多くなっていた。寂しさもあり、空き家となった森田屋の前を通る常子。そこに、女学校時代の同級生で、結婚後、名古屋に移り住んだ(阿部純子)からの手紙が届く。手紙には、満州に軍医として赴くことになった夫の身案じる綾子の心情が綴られていた。戦争の影が自分の身近な人にも及んでいることを実感する常子。そんな折、鞠子(相楽樹)も大学卒業後は工場で働くことを決意。清(大野拓朗)は国に統制された木材会社に勤めることに。美子(杉咲花)は、「日本が早く勝てば戦争が終わるのに」とため息を漏らす。子供たちも食べ物が足りずに泣いている。「このところどこを歩いても息苦しい雰囲気で嫌になる」と。すると、「明るい話を提供する」と隈井(片岡鶴太郎)。隈井は、材木の切れっ端で飛行機などの玩具を作り、子供たちに配り始める。そして、「人を笑わせるのが好き」という隈井の言葉にハッとする常子。ある日、甲東出版では企画会議が行われる。意見を求められた常子は、この時世だからこそあえて「笑い」をテーマにしてはと提案する。編集長の谷は最初、躊躇するが、五反田たちに賛同を得られ、笑いを題材にした雑誌づくりを始める。

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ある日、五反田から内務省に勤める、ある男から挿入絵をもらってきて欲しいと頼まれる常子。その男の名前は、花山伊佐次(唐沢寿明)。聞けば気難しい男だという。緊張の面持ちで、内務省に向かう常子。花山の勤務する部屋に入ると、そこに標語を読み上げる男の姿があった。花山は、常子が声をかけた途端、「帰れ、邪魔するな」とひと言。常子が話を続けようとすると、今度は、「3度も同じことを言わせるな!」と一喝する。花山は、挿絵はできてないから帰れ、とまくしたて、「憲兵を呼ぶぞ!」と叫び、常子を睨みつける。その態度に憤慨し、常子が立ち去ろうとすると、今度はどんな手を使っても原稿や挿絵をもらうのが有能な編集者だと説教される。「君が編集者として才能を見たなら書こうと思ったのだが、まだまだ未熟なようだ、書く気がしなくなってしまったよ」と薄ら笑う花山。今日は気分が乗らないので描かないときっぱり。帰りかけた常子は、ふと振り返り、「私と賭けをしませんか」と持ちかける。一時間で花山が挿絵を描くか、描かないか。常子は「花山さんが描かないほうに賭ける」とニヤリ。まんまと一本取られた花山は、スケッチブックに挿絵を描き始める。そして、花山は、赤い屋根の家を描いた。「小説の世界がそのまま家になったようです!」と感心する常子。喜び勇んで会社に走って戻るのだった。

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ある晩、青柳の食卓では、来年の祭りにみんなで行こうという話で盛り上がる。美子は、滝子のために浴衣を仕立てると申し出る。「裁縫の腕がどれだけ上がったか見ていただきたい」と。そこに帰宅した清は、久しぶりに大口の仕事が入った、と滝子らを驚かせる。国が作る縫製工場の工員たちの宿舎の木材の調達を依頼されたというのだ。「これで、昔の青柳に戻る」と喜び合う滝子や隈井たち。そんな折、甲東出版に新刊が届く。いよいよ、常子が提案した新しい企画が載った雑誌が発売される。鼓動が高鳴る常子。そこに、谷が警察に捕まったという知らせが入る。ユーモア特集の企画が検閲に引っかかったという。このご時世、笑える読み物を載せるなんて不謹慎だ、と。常子が、企画を出した自分のせいだと謝ると、「君が責任を感じることはない」と五反田。社員たちは、会社を守るため発売直前の雑誌を回収しようと動き出す。

 

一方、青柳では、清が受けた仕事をめぐり滝子と対立していた。普段通りの暮らしを守れない作りは青柳の名に恥じるという滝子。対して、清は、滝子のように採算度外視の仕事をしていたら店の首を絞めるだけだと言って譲らない。さらに、隈井までも、「今の時世、どんな仕事を受けてでも店をつぶさないことが青柳の看板を守ることだ」と滝子を説得する。絶対、認めないと激昂する滝子に、「お母さんは、僕を跡取りとして認めない」と落胆する清。このまま対立が続くと思われたが、一夜明け、「いったん引き受けた仕事は止めるわけにはいかない」と滝子。工場宿舎の件は清に任せると告げる。滝子のいつになく静かな物言いに、不安を感じる君子。そんな折、会社では、谷が警察に釈放され、仕事に復帰。新刊も発売するというが、検閲に引っかかった部分を削除しなければならない、と谷。雑誌のユーモア企画のページを破り始めるのだった。

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昭和17年、米英との戦争が本格化し、常子たちの出版社は政府から厳しい検閲や締め付けを受けていた。そんな中、組合から戻った清は、床に伏せる滝子に唐突に願い出るのだった。「200年の伝統を誇る青柳商店の看板を背負うのに、私の器は耐え切れなかったんです。これから私たちがどうするのか、お母さんが決めてください」と。清いわく、2ヶ月後、深川の材木商は個人営業も禁止されることが決まった。さらに、陸軍の下請けで、国のための営業なら続けてもいいという。青柳を潰すか、続けるか、看板を守り抜きたい滝子の心は大きく揺れる。そして、いったんは、陸軍の下請けになることを決めた滝子だったが、それ以来、床に伏せってしまう。そんな滝子の回復を願い、君子は、参拝を繰り返していた。ある日、神社で拝んでいると、滝子が姿を現した。昔、君子がおみくじで大凶を引いたとき、滝子が、自分が守るから安心するよう励ましてくれたことが嬉しかったと話す君子。だが、滝子は、「もうろくした今は、そんなことも叶わない」と弱気な様子。青柳に戻った2人は、隈井から、青柳の営業停止を待って工場の事務所として借用したいと軍より通達があったと聞かされる。「冗談じゃない! 店は閉めないよ」と興奮する滝子。陸軍の下請けの話も正式に決まったわけではなかった上に、深川の木材商は、国が全て廃業するという噂もあるという。

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それから数日が経ち、滝子は、清たちを自室に呼び、青柳の看板を下ろすと宣言する。200年の看板を守るからこそ、晩節を汚す前に身を引くと話す滝子。木曽の療養所にひとり移り住むことを告げると、清は、自分も一緒について行くと言う。「情けない話ですが、私は、お母さんに褒められることだけを考えて生きてきたのだから、今さら、生き方を変えられません」と清。そんな取りを見ながら涙にくれる隈井は、番頭の最後の仕事として、木曽まで見送りたいと申し出る。すると、滝子は、自分に付き合ってひと芝居打って欲しいと2人に頼む。

その翌朝、滝子は常子たちを集め、店を畳むと告げる。陸軍の借り上げの話を受けるため、常子たちは、隈井が探してきた目黒の借家に住むようにと説明する。自分は清と共に木曽で暮らすから、と。そして、離れるのは嫌だと抵抗する美子に、ほんのいっとき軍に貸すだけで、戦争が終われば深川に戻って青柳を始めると説得する滝子。その眼差しを見て、常子はすべてを悟った。

一月後、青柳商店の看板が外される。「結局、守りきってやれなかった」謝る滝子に、君子は、「私は、この家に生まれて幸せだと思っている」と告げる。涙を流して抱き合う2人。そして、旅立つ滝子は、常子にこう語るのだった。木材は40年、50年前に植えたものが育って商品になる。植えた時には自分の利益にならないが、40年後に生きる人たちのことを思って植えるのだ、と。「次に生きる人のことを考えて暮らしておくれ」という祖母の言葉に頷く常子たち。これが、常子たちが滝子を見た最後の姿となった。数ヶ月後、目黒に引っ越した小橋家。常子は、母と二人の妹を守る誓いを新たにする。

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第13週(6月27日〜7月2日)の『とと姉ちゃん』は、『常子、防空演習にいそしむ』。戦況がますます悪化し、常子(高畑充希)たちは、深刻な物資不足に頭を悩まされる。常子が勤める出版社では谷(山口智充)や他の社員が徴収され、五反田(及川光博)のみが残っていた。ある夜、突然、防空警報が鳴り響く。防空頭巾を被って逃げる常子。自宅では、鞠子(相楽樹)と美子(杉咲花)が、君子(木村多江)と共に、庭にある小さな防空壕で身を寄せあっていた。しばらくして、空襲警報が解除される。翌日、常子は、ある決意を固め出社すると、五反田から「もう雑誌を作らなくていい」と言われ困惑する。

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