連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の第19週は、鞠子(相楽樹)が女流作家・平塚らいてう(真野響子)に会い、人生の大きな転機を迎える。水田(伊藤淳史)と鞠子の交際は順調に見えたが、2年の月日が経とうとしていた。水田からのプロポーズに答えを出せない鞠子に、理由を尋ねる常子(高畑充希)。鞠子は、大学まで出してもらったのに出版の仕事もままならず引け目を感じていると明かす。自分の生き方に答えを出せないまま、結婚を選ぶのは水田にも失礼だ、と。

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ある日、常子が東堂(片桐はいり)の家を訪ねると、東堂宅を晴れやかな表情で出てくる鞠子を見かける。東堂曰く、結婚の相談に来た鞠子に、「あなたは今、挑戦していますか?」と質問したと言い、仕事で何かを成し遂げたとき、答えが出るかもしれないと助言した東堂。鞠子は、まずは仕事で成果を出そうと奮闘する。しかし、花山(唐沢寿明)から原稿をダメ出しされ、自分の文才のなさを痛感する鞠子。

 

ある日、突然作家が下りてしまい予定の原稿に一つ穴が空いてしまう。ほかに良い作家はいないかと花山に言われ、みんなが悩んでいる中、鞠子が平塚らいてうに執筆の依頼をしようと提案をする。誰もが知っている著名な作家であり、らいてうの言葉を待っている読者がたくさんいる、と。鞠子が担当することを認めた花山は、らいてうは信頼している編集者としか仕事をしないので、まずは担当編集者に会うよう助言する。鞠子は門前払いを受けるも、担当編集者の若松の元に何度も足を運び交渉を続ける。最初はまったく相手にしなかった若松も、鞠子の熱意に打たれ、らいてうに話を通しておくと約束。すると後日、会社に一本の電話が入る。らいてうが直接担当者に会って話したいという内容を聞き、色めき立つ社員たち。「まだ、書いてくれるかどうかはわからない」と言う常子に、鞠子は、らいてうを必ず説得すると息巻く。

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鞠子は、平塚らいてうの自宅を訪問。やっと会うことができたらいてうに、『青鞜』で自分が感動したような女性に向けての言葉を寄稿してほしいと依頼する。すると、「執筆いたしますよ」とあっさり引き受けるらいてう。しかし、らいてうから提案された執筆の内容は、意外にも“夏に食べたくなるおしるこ”の随筆だった。「戦争があったことで、私も大きく変わったの。女性の問題も大切だけれども、何よりも平和が一番。人の考えは変わるもの、それはいいことなのだ」と微笑むらいてう。だから今は『あなたの暮し』の読者が求める、明日の暮らしに役立つことを書きたいと話す。会社に戻ると、東堂が鞠子の帰りを待っていた。鞠子は、らいてうが執筆を快諾してくれたことを報告すると、今回、らいてうの言葉に救われたと打ち明ける。「自分の流されているような生き方が情けないと思っていたのですが、そんなことはないと言っていただいたような気がして」と。東堂は「あの平塚先生が明日の暮らしがよくなる知恵を書くことでホッとする人がいる。あなたのように」と鞠子の背中を押すのだった。

 

平塚らいてうからの原稿を無事受け取った鞠子は、原稿を読んだ花山から「素晴らしい言葉を書かせた」と褒められる。「君のことだ、女性の権利主張を謳った女性を勇気付けるような原稿を依頼したのだろう。だが、その考えをすぐに引いて、こうした優しい慈愛に満ちた言葉を引き出し、読者が作ってみたくなる“胡麻しるこ”を融合させたのは君の力だ。よくやった!」と花山。

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仕事に一区切りつけられたと感じた鞠子は、その帰り道、水田にプロポーズを受けることを伝える。「私、太陽のようになれるものをようやく見つけられました。それは、水田さんの妻です」と心を決めた鞠子。水田の2度目のプロポーズに「ハイ」と満面の笑みで答える。その夜、水田が小橋家に結婚の挨拶に行くと、常子たちも大喜びで二人を迎えた。「キレイだろうな、鞠姉ちゃんの文金高島田……」と美子(杉咲花)。早速結婚式の準備を始めた水田と鞠子は、花山に媒酌人を依頼する。しかし、「私はそんな柄じゃない」とあっさり断られてしまう2人。すると今度は、宗吉(ピエール瀧)の店に出向き、宗吉と照代(平岩紙)に媒酌人になってほしいと頼む。

 

水田の実家に結婚の挨拶に出かける鞠子。夕方になっても帰らない鞠子を常子や君子(木村多江)が心配しながら待っていると、鞠子は水田の父・國彦(筧 利夫)と母・むめ(高橋ひとみ)を連れて帰宅する。結婚の知らせが嬉しくて、居ても立っても居られずやってきたという水田の両親は、動揺する小橋家をよそに土産の品を広げ、ジョークを連発する。人の良さそうな國彦たちを見ながら、安堵の表情を浮かべる君子。すると國彦は、結婚も出来ない大人は一人前とは言えないのでやっと結婚できて心底ホッとしていると話すのだった。

 

その夜、亡き夫・竹蔵(西島秀俊)の仏壇に向かって鞠子の結婚を報告する君子。常子は、「子供が結婚するまで親は死んでも死に切れない」と國彦が言っていたが、君子も娘が独身のままでは安心できないのか? と尋ねる。すると、君子は、確かに、常子も美子も素敵な人と出会って幸せに暮してほしい。でも、それは安心だからではないと話し、こう続けた。「あなたを見ていると幸せの形は一つではないのかなあと思うわ。結婚しなくてもあなたは十分に一人前です。それは確かよ」と。そして、素敵な結婚式にしようと笑う常子と君子。夏に出版された『あなたの暮し』第12号は、らいてうの記事が評判となり10万部を売り上げる。

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昭和25年11 月。水田との結婚式を翌日に控え、一家四人での最後の食卓を囲む常子たち。いつもと変わらない他愛もない会話の中、鞠子は突然顔を曇らせると、ひとりひとりに挨拶を始める。まず、君子には「私、かかのようになります。いつも家族を陰ながら支えて守ってくれる。そんな憧れのかかのような存在に」と母への感謝の思いを伝える。また、常子にも深く頭を下げると、「落ち込んでいたらいつも明るく励ましてくれて。悩んでいたら必ず背中を押してくれて、どれだけ助けてもらったことか。とと姉のおかげで一点の曇りもない晴れやかな気持ちでお嫁に行けます。本当にありがとうございました」と礼を言う。さらに、美子のはっきりとした性格が羨ましかったという鞠子は、「作家になる夢は諦めてしまったけど、これからは水田さんの妻として、よっちゃんのように迷わずまっすぐ進んで行くつもり」と力強く語る。そして、最後に竹蔵の遺影に語りかけると、「とととかかのように温かい家庭を築いて見せますから、見守っていてください」と鞠子。「幸せになってね」と涙と笑顔で見送る常子たちに、結婚すると「水田鞠子」で「みずたまり」になってしまうとおどけて見せる。翌朝、鞠子は白無垢姿で近所の人々に見守られながら式場に向かう。

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鞠子と水田の披露宴は、媒酌人を務める宗吉の乾杯の音頭で始まった。みなが歓談する中、原稿を手にぶつぶつと何かを呟く常子。宗吉に頼まれ、鞠子の父親代わりとして最後に挨拶することになっているのだ。そんな中、上司である花山の挨拶が始まると常子の顔が青ざめていく。花山と同じ様に、常子も味噌汁を使って二人の人生を話そうとしていたのだ。動揺する常子をよそに、宗吉が常子の名前を呼ぶ。懸命に話そうとするが、とっさのことで言葉が出てこない常子。「私、いつもそうなんです。どこか間が悪いというか、失敗が多くて」と言い、そんなとき、いつも隣りにいてくれたのは鞠子だったと語り始める。鞠子との思い出を振り返りながら、自分は父親代わりとして一家を支えてきたが、そんな自分を支えてくれたのは鞠子。その存在の大きさを改めて痛感する常子は、「私の大事な妹を幸せにしてあげてくださいと」と水田に頼むのだった。そして、水田の「お約束します。僕は鞠子さんを一生かけて幸せにします」と渾身の言葉に、感動の涙を流す鞠子。祝宴の会場は拍手が巻き起こっていた。

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第20週(8月15日〜20日)は、「常子、商品試験を始める」。常子(高畑充希)は花山(唐沢寿明)の提案で、理想の台所を求めて各家庭を取材することに。取材中、常子は2人の子どもと出会う。聞くと女の子は傘で遊んでいたら、服に色移りしたのだという。豊富な種類の商品が出回る一方で、粗悪品も多く混在する今、常子は試験をしてどの商品が優れているのかを読者に示す企画を作ることを発案。まずは石けんを取り上げる花山たち。本格的な成分分析は専門家でないとできないからと民間の検査機関に依頼する。一方、常子は、赤い傘の女の子に再び声をかけられる。父だと常子に引き合わせたのは、15年前に別れた星野(坂口健太郎)だった。

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