[E:note]僕もハコさんの歌を聴いたのは大学のころです。高橋伴明さんが僕の先輩だから、『愛の新世界』を観に行って、それでハコさんが2曲ぐらい歌っていらした。映画の内容的にもそういう女の子たちの話ですね。伴明さんが監督して、荒木経惟さんが写真を撮った映画です。
山崎 あれは、たしか18歳以下は見られないですよね。あれも、あの歌ができてよかったですよね。
[E:note]そのイメージがあるから、例えば役者さんを取材するときに、僕のそのときの記憶が生きるわけです。「そこに山崎ハコの歌があって」というところから僕はきているから。
[E:note]いまの若い子たちはいろいろな事件が起きて、人間関係も稀薄になったところで、「自分たちも考えたいから、歌もちゃんと聴きたい」という時代が来たような気がします。だから、フォークも流行ってきて。
07 山崎 そうだと思いますね。「えっ? これ、何十年前の歌なんだ」というのはあるかもしれない。私たちの何かを欲するアンテナは一緒なんですね。だから、アンテナだけはあるんだけど、いろいろなものが入り過ぎているから、見失うのね。カタツムリみたいに、ヒューンとなるじゃないですか。いまの表現で思い出したんですけど、私はカタツムリみたいにと言うけど、あれは知っているからなの。突くと、こうなるというのを知っているから。そういうのもあえて言ったほうがいいんじゃないかと思う。カタツムリとか、知らない子がいるよね。それを、私の小説には必ず出そうと思っているんですよね。でも、日本は変わったわけではないから、いまでもいるんだよね。そして、カタツムリは水をやらないと死んじゃうよとか、そういうなかで生きてきているんですね。共存しているんですよね。早稲田(早大の講義でコンサートを開いた)も皆、聞いてくれたしね。それと、この間のスイートベイジル(ライブレストラン「スイートベイジルSTB139」)で思ったんですけど、結局、大沢悠里さんがすごくラジオで言ってくれたから、主婦の方がいっぱい来てくれたんですね。私のことを知らなくて初めて聴いたって。そして悠里さんが「いいから」と言ってくれて。それが、「ラジオをお聴きの皆さんが来てくれましてありがとうございます」と言うのをころっと忘れて。私、アンチョコも何も見ないからね。だから、「お礼」と書いておけば忘れなかったんだろうけど。もう、ほんとにだめですよね。だから、きっちりしたコンサートも、セリフのようにやらなければいけないのかもしれないけど、ほんとにだめです。ひとつ区切りがついて事務所に入って、今度はスタッフがいて。いままで10年間、ハコがきつい状況の中で、ファンサイトにスケジュールを出してくれたりと応援してくれた人たちとか、いままで隠れファンというの? ハコと言うと笑われて肩身が狭かった人たちが、今度は堂々と出てもいいように。それは簡単な話なんですよ。1曲ヒットするとね。当時のファンは「売れて欲しくない」と思っている。でも、30年も経つと、「もう1回ブレークしてよ」と皆言うわけです。「もうあんまり不幸せなものは見たくない。結婚でもなんでもしてくれ」とファンが言うわけですよ。とにかく、皆で生きていこうよとなっている。それは、前向きでいいことだと思うんですね。私はどうなるかわからないけど、私がヒットするとか、『織江の歌』もそうですけど、常に本当に心の入ったものを作っていって、それがヒットすれば一番いいわけです。それは、ヒットせんかなあと思ってやっていたわけで、CDも出せない状況がずっとあったわけで、事務所もないし。それがいま事務所があったり、スタッフがいると、状況は少し変わるんですよ。私がレコード会社に行って「すみませんけど」と言えなかったりしても、スタッフが言いますよね。そうすると、同じ曲を作るんでも、周りが変えるから。そしていいほうになればファンは喜ぶと思いますよ。人知れず苦労して、人知れずいい曲を出して「それ、CDにしてよ」と言われる。だから、古いファンのために恩返しのつもりでやりたいです。それで、その人たちには、「今度、お子さんも連れて来てね。中学生以上だったら連れて来て」と言います。あと、「旦那さんと来てね」とか。だめでもともとですからね。
[E:note]これから、いろいろ増えるということですね。
山崎 メディアに載ればということでしょう。だから、『女性自身』とかに載るのは嬉しいです。だって、載ることないですからね。フォーク列伝と言って、それこそイルカさんとかのことを『アサヒ芸能』がやってくれているんです。「裸の写真が多いから電車の中で読めないよ」とか、「子どもの前で読めないよ」とか言いながら、皆喜んで見てくれたりするんですよ。だから、もう少しいろいろなところが取り上げてくれないかなと思います。あと、新聞が取り上げてくれたりしたんですけどね。そして大沢悠里さんのイベントで見たときに、主婦は絶対にわかってくれるよなあと思っていたので、嬉しいですね。美容院に行ったときは、ここぞとばかり見ています。この間、美容師さんがいっぱい来てくれて、Tシャツも買ってくれたりした。そして早稲田の辺りも第何火曜日とか、休みの日の人は来てくれるとか、美容師さんの間でチラシとかも置いてくれているから、これも見てくれるよなあと思っています。ひょんなことからだけど、嬉しいですよね。あのころは本当に苦労しかないからあれだけど、でも、あんまり苦労話を書いてもなとか思ったりする。

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