image ――今回のニューアルバム『ONEHEART』は最高の仕上がりですね。もちろん全作詞・作曲がMetisさんですが、特筆すべきは「ああ、“歌がうまいアーティスト”とは、こういう人のことを指すんだ」と思わせるほどの、比類ない歌唱力です。

「ありがとうございます!! そんなに褒めていただけるなんて、本当に嬉しいですね」

――昨年12月に東京・浜離宮でライブを完遂されました。あの直前、非常に辛いことなんですが、お母さんの和子さんを52歳の若さで、癌で亡くされました。

「そうですね……命日が12月12日で、ライブが19日でしたから、ちょうど1週間前のことでした。リハーサルの最中から母の具合がよくなくて、私は病室とスタジオの行ったり来たりだったんですが、バンドの方々の温かい励ましでようやく迎えることができたライブだったんです」

――たったひとりの肉親を亡くした直後の心中は察するに余りあるんですが……。

「亡くなった直後は、慌しい日々でした。仕事のスケジュールも詰まっていましたから、人前で歌って、動いて動いてという感じで、忙しさで気が紛れていたんですね。
でも、亡くなって3カ月ほどした頃でしょうか、今年の3月くらいですかね、ひとりで家にいると、夜中にすごく悲しくなって、朝まで眠れないこともあったんです。
最初の頃は母を思い出すと辛いから、仕事を忙しくこなして、なるべく『忘れよう』と思うようにしていた部分があったんですが、その後のそういった眠れないほどの日を過ごしてくると、『ちゃんと向き合わないと乗り越えられないな』と思うようになったんです。私なりに乗り越えてきて、やっと自分らしく、ステージでみんなにパワーを与えられるようになってきたのかなと。
もっと落ち込むのかなと思ったんですけど、いまはけっこう大丈夫で、より一層、パワーにあふれているような感じになっています」
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――精神的に辛かった頃はやはり、周囲の方々が支えてくれたんですね。

「そうですね、ミュージシャン仲間や先輩はスタジオや現場で励ましてくれました。プライベートの友だちは、バーベキューパーティーを開いてくれたり、ご飯を作りにきてくれたり。心が強くなれたり、優しくなれたり、支えられているなと実感できました」

――今回のニューアルバム『ONE HEART』は、いつごろ作詞・作曲を?

「やはり春頃から作りはじめました。いろいろと考えていた時期に重なるんだと思います」

――そういうことも含めて聴いてみると、やはりメッセージ性が強いというか、何か自分自身も励ましているように感じるところもありますね。

「そうですね、作っていくうちに、どんどん『前進する』、『新しい世界を始める』というテーマの曲が自然とできてきて、自分自身の応援歌という意味もあったんだと思います。それが今度は、リスナーのみんなの背中を押すパワーになってほしいし、何かのメッセージが伝わればいいと思うんです。すごく辛いことがあったからこそ、人の優しさとか、歌えることの感謝の気持ちとかを、歌にこめることができたので、すごく成長することができたと自分でも思う。人のありがたさが以前よりもよくわかったんです。これからは、親はもういないので、私はひとりで生きていかなくてはいけない。だからファンの方もそうですけど、周囲の支えてくれる方々にも、何かしら伝えていきたい。
アルバムのラストソングは、支えてくれたみんなへの感謝を込めた『この詩にのせて』。いろんなことを乗り越えて、前進して、支えてくれたみんなに『ありがとう』と言えている自分がいます。
そういったストーリーがこのアルバムのなかに詰め込まれているんです。これまでに私が体験してきたすべてが詰まっています。これを聴いてくれる人には、私がいまこういう気持ちなんだと、感じてほしいんです。みなさん、心配してくれていると思うんですが、私はいま、元気でやっているし、心配ないですとも伝えたい」

――すごくよくわかりますね。そういう意味もあって、さらに積極的な内容が他の曲では展開されているんですね。
たとえば、オープニングからつづく2曲目の『OH YEAH!!』では、“肉食女子”になりましょう ――なんて歌っている!

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「そうそう、最近流行りの“草食男子”、私は困りますからね。私の同世代の男の子って、なんか大人しいんですよ。逆に女の子のほうが積極的で、何にでもガンガン行けると思うんです」

――『女性自身』の読者の方々には、どんな部分を聴いてほしいですか?

「私はこれまで、あんまりラブソングを書いてこなかったんですけど、今回はたくさんあるんです。私はどの年代になっても、どこまで年をとっても、素敵で純粋な恋をしていきたいと思っています。
『女性自身』の読者の方も、素敵な出会いや恋、結婚している方なら素敵な夫婦で、いつでもキラキラ、ウキウキな心を忘れないでほしいと思います。
ひとりの女性としての魅力を忘れないでいてほしいんです。このアルバムを聴いて、いつまでも10代のような気持ちで過ごしていってほしいと思います。私の母も、相当ファンキーでしたから(笑)」

――最後に、アルバムに込めた思いをお聞かせください。

「そうですね……3曲目の『母賛歌』は絶対に入れたかった歌。私の一生を変えるような出来事があった曲で、この曲を通して、母の人生を見てほしいです。
これからも私は、みなさんの前で歌いつづけなければいけないと思うんです。それが母の願いですし、その願いを今回のアルバムで省くことはできないと思った。
そこから入ってくれる方もいると思いますし、全体を聴いてもらったとき、『ああ、こんなにポジティブなコなんだ』と思ってくれたらいいですね。その上で、そんな方々の背中を押す役割ができたらと思います」

 

●めてぃす★

84年広島県出身。被爆者の祖父母を持つ。06年メジャー・デビュー。Metisの由来はギリシャ神話に登場する叡智の女神の名。07年広島・原爆ドーム前でライブを行い注目される。09年1月には『母賛歌』が着うたフルで1位に。8月29、30日の日本テレビ系列『24時間テレビ』に出演が決定している。

 

アルバム『ONE HEART』(ユニバーサルシグマ)発売中、
初回限定盤DVD付き3,600円(税込み)、通常盤3,000円(税込み)

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Metis Official Website

http://www.metis-web.jp/

 

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