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今年は『ビッグ・フィッシュ』や『デスノート THE MUSICAL』などが好評だった俳優の浦井健治(36)。日韓文化交流企画『ペール・ギュント』の製作発表の席では、「アンニョンハセヨ!」と挨拶し、会場の緊張をほぐした。

 

「僕の役、ペールならこういう挨拶しそうだなって(笑)」(浦井・以下同)

 

ノルウェーの劇作家イプセンの劇詩を原作に、韓国の演出家ヤン・ジョンウンが演出する壮大な“自分探し”の物語。自由奔放なペールが現実と精神世界で出会いを重ねながら、数奇な一生をたどる。

 

「ヤンさんが『浦井はペールみたい。ぜひ演じてほしい』とこの演目を選んでくれて。ところが、ペールって女たらしで逃げ腰で、とんでもなく自分勝手。えっ、これが僕!?って(笑)。でも確かにペールと僕は似ているかもしれない。普通であることに満足していなかったり、尊敬しているのに親に歯向かってしまったり。逃げ腰なところも(笑)。それに人生でいちばん大切なものが何かわかっているけれど、とりあえず旅してみたいなと思っている。きっと今の自分を認めたくないんです」

 

デビューから16年。次々に大舞台に立ち“ミュージカル界の王子”とも呼ばれるが。

 

「『順調ですね』って言われますけど、作品ごとにいったんゼロの状態になると、次に飛び込むのが怖くなる。そういうときは恐怖心を受け入れます。そしてたまに逃げる。漫画やゲーム、買い物、筋トレに励んでみたり。けれど結局、逃げ場はなく、稽古場や板の上でみんなで答えを導き出して乗り越えていく連続です」

 

去年の『ヘンリー四世』では限界や危機をも感じたそう。

 

「それは僕にとってまさに“事件”でした。思うように演じられず、プレッシャーに押しつぶされそうで。先日、劇場近くの喫茶店でマスターが、『浦井は今回のハル王子をしっかり演じきったら高評価を得るだろう』としゅうさんが話してたよ、って。共演した中嶋しゅうさんは常にアドバイスをいただくなどお世話になってきた憧れの先輩。夏に突然亡くなられてしまいましたが……。いつも陰で見守っていてくださったんですよね」

 

先輩の予言どおり、今年文化庁芸術選奨の演劇部門新人賞を受賞。彼もまた、人との出会いに支えられながら人生を紡いでいる。

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