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今春、誰もが大切な人に会いたくなるハートウォーミングな映画が公開される。タイトルは『ばぁちゃんロード』(4月14日公開)。海沿いの田舎町を舞台に、結婚を間近に控えた根っからの“おばあちゃんっ子”の孫娘・夏海(文音)が、足をケガして施設で暮らす祖母・キヨ(草笛光子)と一緒にバージンロードを歩くためふたりでリハビリに奮闘する物語。女性自身は、本作でヒロインを務めた文音に独占インタビュー。W主演を務めた草笛との共演秘話をはじめ、女優デビュー10年目、30歳という節目を迎えた心境を聞いた。

 

――完成した作品の感想から聞かせてください。

 

最色で言ったらパステルカラー。とても爽やかで、透明感のある作品だと思いました。篠原哲雄監督が得意とするジャンルだと思いますが、日常生活の一コマを上手に切り取った作品だなあ、と。

 

――富山県氷見市で撮影されたんですよね。

 

とにかく、絵がとてもキレイなんですよ。花、空、海……さまざまな実景が美しくて。どこを取っても絵ハガキになるような写真の連続のようです。

 

――撮影期間は昨夏に2週間ほどだったと聞きました。撮影中の思い出は?

 

2週間の撮影期間で1日だけ撮休があったので、その日、スタッフとキャスト総出のバーベキュー大会をやりました。地元の人たちが氷見牛などの特産品を提供してくださったり、監督自ら焼きそばを作ってふるまってくれたりと、とても和やかな会で。スタッフと役者がそんなふうに交流するって、映画の撮影現場ではかなりめずらしいことだと思います。地方ロケということがみんなの絆を深めたのかもしれないし、篠原監督のお人柄のせいなのかもしれない。役者同士が仕事の現場以外で話すことが作品自体に生きることもありますし、こういうことは貴重だし、もっとやらなきゃダメだなって思いました。

 

――今作は、祖母役の草笛光子さんとのW主演ということもあり、ご自身がリーダーシップを発揮しなきゃという思いもあったのですか?

 

“主演だから”ということは、逆に、あまり考えないようにしていたと思います。プレッシャーになるだけですし。その点で言えば、映像の現場よりも舞台のときのほうが意識的にみんなを引っ張っていこうとしますね。作品自体が座長のカラーになりますから。でも、主演かどうかに関わらず、私自身、日ごろから自分が関わる人と積極的に話しかけよう、コミュニケーションを図ろう、と心がけているほうだと思います。それは、私のデビュー作を撮ってくださった佐々部監督の教えのおかげです。

 

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――デビュー作は、2008年公開の映画『三本木農業高校、馬術部』ですね。佐々部清監督からどのような指導があったんですか?

 

映画というのは、「役者だけで作っているわけではない」と。照明や録音という撮影部がいて、いろいろな人たちがいて一つの作品が作られているということです。だから、「主演がやらなきゃいけないことは、みんなの名前を覚えることだ」と佐々部監督に言われて、それはもう、私の体にしみっついていますね。「照明さん!」とか呼ばず、スタッフさんは必ずお名前で呼ぶというのは意識的にやっています。

 

――今作で文音さんが演じる田中夏海の魅力は?

 

脚本を読んだときは、“夏の海”だから、名前のとおり太陽のような女のコというイメージでした。元気で、明るくて、28歳という年齢にしてはちょっと落ち着かないというか、いつも動き回っていて、子供っぽい。でも、演じていくうちに、「夏海って、めちゃくちゃ甘え上手だな」という印象が強くなりました。草笛光子さんが演じるキヨばぁちゃんがとてもお茶目でかわいらしいので、そういう部分を受け継いでいる感じもします。

 

――具体的にはどういうところが甘え上手だと思ったんですか?

 

とにかく、台風の目のような女のコなんですよ。夏海が動くと周りの人間がみんな巻き込まれる。「ばぁちゃんとバージンロードを歩きたい!」という彼女の思いつきに、キヨばぁちゃんをはじめ、両親、恋人の大和(三浦貴大)、病院の人たち、みんなが振り回されることになるわけですから。それって、信念があるといえばそうだし、純粋に、まっすぐに育ってきたんだなあと思いました。計算がないぶん、魔性の女ですよ(笑)。

 

――文音さんご自身はそういう魔性的な部分はないんですか?

 

全くない、ない!(笑)。私自身は、まったく甘えられない女なので、彼女のように甘え上手になりたいですよ。夏海みたいな女のコだから、大和のような優しい男性がそばにいてくれるんだろうなあって羨ましくて。「バイトはやめていい。俺が働くから、おばぁちゃんのそばにいてやれ」と言ってくれる恋人なんて、よくないですか!演じながら、「彼女、マジで無意識に甘えてる!」と思いましたもん(笑)。私自身は、まだ結婚できないですね。「家事は全部僕がやるから、君は思う存分仕事をしていいよ」と言ってくれる人が現れてくれたらわからないけど(笑)。

 

――草笛さんと共演されるのは、『SAKURA~事件を聞く女~』(’14年)以来、3年ぶり。一緒にお仕事されて、改めて草笛さんから学んだこと、影響を受けたことはありますか?

 

いちばん勉強になったのは、本番前のお稽古ですね。草笛さんは、2人のシーンの前には必ず、セリフ合わせをするんです。「ヨーイ、スタート」でいきなり演技に入るのではなく、呼吸を合わせてから本番に臨むというやり方がとても勉強になりました。また、草笛さんは、役に対して良い意味でわがままというか、「ここはどうしても譲れない」というところをしっかり持っていらっしゃる。相手が監督でも決して妥協しない。そういうお姿を間近で見て、私も、もっとわがままなってもいいんだなあと思いました。

 

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――草笛さんは、最近、着こなし術の本を出版されるほど、ふだんからオシャレに気を遣われる方だと聞きましたが。

 

富山に滞在期間中、草笛さん、ホテルのご自分のお部屋にワードローブを運び入れて、ダンボールで5~6箱のお洋服を持ってきていました。私、ロケ先でタンスを買われた方を初めて見て(笑)。あと、ツインベッドルームのベッドを1つ取り外してエクササイズスペースを作られて、ストレッチや筋トレをされていました。「さすが、一流の女優さん!」とホレボレ。

 

――文音さんご自身のこだわりは?新作に入るとき必ずされることとか?

 

私、役のかけもちができないんです。器用じゃなくて。あまり作品が縫わないようにしてもらうことはしていますね。

 

――器用にこなすところは?

 

運動は得意です! バレエもやりますし、アクションのお稽古もしていますし、ヨガもやって、とにかくつねに動いていないと気持ち悪い。運動は何でも器用にこなすと思います。

 

――ちょうどデビューして10年。振り返って、女優のお仕事についてどう思っていますか?

 

私にとっての20代の10年の月日は、本当にいろいろなことがありました。落ち込むこともあれば、もう1回頑張ろうと思ったこともあったし。今回、10年という節目で、『ばぁちゃんロード』のような作品をできたことは本当によかったなあと思います。何よりも、「私は、やっぱり映画がいちばん好きだ!」って再認識できたことがうれしくて。映画を作る現場が大好きなんです。これまで、何度となく“将来、どういう女優になりたい?”って問われてきて、これまでは、サイコパスや殺人鬼などインパクトのある役をやりたい、と。そのほうが役者として成長できると思っていたんです。でも、『ばぁちゃんロード』をやり終えて、リアリティーのあるお芝居というものにもっと寄り添っていきたいと思うようになりました。等身大な役ほど、掘り下げれば掘り下げるほど、どんどん追求できるような気がするし、もしかしたら、そっちのほうが難しいのかもしれない、と。ようやく答えが見つかったような気持ちです。

 

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――昨年から出演作品が続いていますし、30代に向けて運気が上向きな感じですね。

 

よくなっていればいいなって思います。でも、自分自身のなかでは、よくなっている実感は全くないですね。主演が続いたからって安心できるわけでもないし、本当、この世界っていつ仕事がなくなるかわからないですから。そのなかで自分にしかない武器を持つということはすごく大切ですし、そういう意味でも、もっともっと成長しなきゃいけないと思います。役の幅を広げたいし、アクションもやりたいし、そこは貪欲になっていきたいです。実は私、“ネクストブレーカー”と言われて数年経つんですよ。「いつ本当にブレークするんだろう? 」って思っています。

 

 

【文音(あやね)プロフィール】

’88年3月17日生まれ。東京都出身。’08年、映画『三本木農業高校、馬術部』で女優デビュー。同作で第33回報知映画賞新人賞、第32回日本アカデミー賞新人賞を受賞した。近年の出演作品は、映画『八重子のハミング』、『イタズラなKiss THE MOVIE』 シリーズ、舞台は、『熱海殺人事件 NEW GENERATION』ほか、ディスグーニーpresents Vol.4 『GOOD-BYE-JOURNEY』にジャンヌダルク役で主演、ネットニュースの裏側を描いた『Fake  News』ではジャーナリスト役で主演をはたした。

 

【公開情報】

映画『ばぁちゃんロード』

4月14日(土)、有楽町スバル座ほか全国順次ロードショー

出演/文音、草笛光子、三浦貴大、桜田通、鶴見辰吾ほか

監督/篠原哲雄

脚本/上村奈帆

配給/アークエンタテインメント

 

(C)2018「ばぁちゃんロード」製作委員会

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