「ベタベタするだけが家族じゃない」永作博美 “女優と母”両立の葛藤を経て…たどり着いた2児との“自然な距離感”
画像を見る 桜が満開の日に取材(撮影:高野広美)

 

■子育てするうちに自然と芽生えた母への感謝

 

ドラマ『時すでにおスシ!?』では“子離れした母”を演じる永作さんだが、彼女自身の「子離れ」はどうなのだろうか。

 

「私は、ぜんぜん大丈夫ですよ。子どもは子どもの人生ですから、好きにしてくれればいいと思う」

 

最近あった出来事を、目を細めながら話す。

 

「上の子が、自分から『ご飯を作りたい』と言い出したんです。だから私は『包丁も使っていいよ』と。もう大人の入り口に片足を突っ込みましたから、やらせようと思っています」

 

それはまさに、永作さんが16歳で母から受け継いだものを、伝承するかのよう。

 

「はい。様子を見ながら、少しずつ教えています」

 

最近教えたのは「ゆで卵」だ。

 

「『黄身がトロトロの、いい感じのところで作りたい!』と言うほど、卵に対するこだわりが強いので、『面倒くさいこと言うなあ~』と思いつつ、一緒にやってみながら『まだ、これじゃない!』とか言い合って……」

 

一方、2人目の子とのスタンスもユニークだ。

 

「下の子は、まあ、おしゃべりなんです。いろんなことを聞いてほしい人で、私の帰りを待って、ぜんぶ話してくれるので助かっています」

 

多感な時期に入る子が話しかけてくることを「なにかしらの助言と安心感が欲しいのではないか」と永作さんは感じている。

 

「ですので聞かれたことへの答えは、キチンと出すように心がけています。『お母さんとしては、こう思うよ』と。そして『あとはあなたに任せるから、もしまたなにかあったら、状況を教えて』というふうに」

 

子どもたちとの家でのやり取りを振り返りながら「子育てをして、気づいたことがあるんです」と、あらためて言う。

 

「私自身が母になって、初めて、実家で母がどれだけのことをしていたか、わかるようになりました。『なぜ朝起きたら、毎日リビングがきれいになっているのか?』という類いのことです」

 

母は、前日にどんなに疲れても、翌朝、誰より早く起きていた。

 

「家じゅうぜんぶ、きれいにして、私が起きるころには、すべて元どおりになっている。外出から帰ったら洗濯物が畳まれていたり……。そのとき当たり前だった光景が、親になったら『当たり前ではない』のだと気がついた。『母がしてくれていたことだったんだ』とわかったのは衝撃的でした」

 

子どもが成長する過程で、日々気づき、驚かされることばかり。その最たるものが「母は仕事をしていたのに、ご飯も作ってくれていた」ということ。

 

「16歳の私には、気づけなかったことでした。そして私が気づかないことも、そのときの母には織り込み済みだったんでしょう」

 

前述した16歳当時、永作さんは反発しながらも家事を続けた。そしてあるとき、ふと気づいたのだという。

 

「ずっと抱いていた『なんで私が?』という感情が、いつの間にかなくなっていたんです。そしてもうそのころには、炊事もすっかり板についていました。母は『いつかこの子が上達して、自分でわかる日が来る』と見越したうえで、黙っていたのではないかと思います」

 

母から子へ、受け継がれているものは、まだあった。

 

「いま、家族みんなで外出するとき、私がいちばん支度が遅くなるんです。するとみんなから、『ホントに遅いんだから、お母さんは!』と言われる。でも私は、家族のいろんなこと(準備など)が気になってしょうがない。なぜ遅くなるかといえば、家族の誰かのことを気にかけて、『あれ忘れてないか、これは……』とやっているからなんです」

 

合点するように、うなずいて、こう言った。

 

「母親になって初めて『母親が遅くなる』ことの意味が、わかりました」

 

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