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厚生労働省は、日本でワキ汗に悩んでいる人は720万人いると推計している。そのうち病院などで治療を受けている人は、5〜10%程度。恥ずかしくて受診に踏み切れないなどの理由で、治療を受けていない人も多い。しかし、現在は近くの皮膚科で治療することができるという。

 

「保険適用で治せる注射薬のボツリヌス療法(ボトックス)が効果的です。ワキ汗の場合、ボトックスを打っても効果がなかったという人はほとんどいません」

 

こう語るのは、多汗症の治療で有名なNTT東日本関東病院ペインクリニック科部長の安部洋一郎先生。ワキ汗に効果的なボトックス治療だが、治療までにはいくつかのステップがあるそう。そこで、安部先生にそのステップを解説してもらった。

 

【ステップ1】チェックリストでカウンセリング

まず、糖尿病やバセドー病、更年期症状などの基礎疾患があるかどうかをチェック。疾病があれば、その疾病に対する治療を優先的に行う。

「私たちの病院では、2人の臨床心理士が、認知行動療法に基づいたカウンセリングをじっくり行います。これまでの病歴に始まり、なぜ、汗をかくと困るのか。どんなときにかかないようにしたいのか、治療の目標地点を聞いていきます」(安部先生・以下同)

 

【ステップ2】まず制汗剤を塗る

スプレーやロールタイプ、直接ワキの下に貼って汗を吸収するシートなど、制汗剤の開発が進んでいる。なかでも、皮膚科などで処方される「塩化アルミニウム」の塗り薬は効果的という。

「市販の制汗剤にも塩化アルミニウムが入っていますが、病院で処方されているものは、濃度が高い。塩化アルミニウムを精製水で溶いたものが一般的で、まずこれを試してみます。塩化アルミニウムの含有量は20〜50%と、濃度は病院によって異なります」

 

【ステップ3】塗り薬が効かなかったら内服薬

塩化アルミニウムを塗ってもワキ汗が収まらない人、あるいは全身多汗の人には、飲み薬が処方される。

「治療薬として認証されているのは、抗コリン薬。アセチルコリンという物質が交感神経から放出され、発汗をうながしますので、それをブロックする薬です。1回3錠を朝昼晩の3回分処方します」

 

【ステップ4】ボトックスをワキに打つ

それでも汗が止まらないという人は、’12年に保険適用が認められ、3割負担で治療が受けられるようになったボツリヌス(ボトックス)治療を。ワキ汗の範囲15〜20カ所ほど、A型ボツリヌス製剤の注射を打ち、汗腺の働きを抑える。注射後、4〜5日目くらいから汗が出なくなり、効果は個人差にもよるが、4カ月〜半年程度は続くという。

「ボトックス治療は、注射を打つ角度や深さによって、うまくいかない場合もあるので、コツが要ります。皮膚から2ミリのところに45度で打つと、薬の効果が発揮されます。ただし、治療を何度も受けていると、皮膚が硬くなってあまり効果があがらないこともあります」