これまで、精神科医・産業医として、メンタルヘルスやダイエットコーチングの本を書いてきた奥田弘美さん。その奥田さんが、初めて片づけに関する本『精神科医が考えた忙しすぎる人のための「開き直り」の片づけ術』を上梓しました。
なぜ、精神科医が片づけをテーマにしたのか、具体的にどんな片づけ術が提案されているのかを中心に話を聞きました。
■引っ越して半年もたたないうちに…
――この本をお書きになったきっかけは何ですか?
3年前に今の家に引っ越した際、かなりの物を処分しました。いわゆる「トキメキを感じない」洋服や食器、日用雑貨など、思い切って捨てたんですね。
おかげで、リビングは女性ファッション誌に出てくるようなスッキリとオシャレな部屋に変わり、寝室や書斎、玄関も見違えるようになりました。これなら、お客さんをお招きしても恥ずかしくない、と。
でも、そんな状態は半年も続きませんでした(笑)
我が家は中学生と小学生の息子がいますが、この2人が片っ端から散らかしていくんです。学校から帰ってカバンを放っておいたり、服を脱ぎ散らかしたり、プリントの類を床に放置していたりで、モデルルームのようだったのが、見る見る生活感たっぷりの部屋に変貌していったのです。
焦りましたね。「ホテルの部屋みたいだったのに…」と悲しくもなりました。息子たちには「ちゃんと片づけなさい!」と口やかましく注意をし、その時はおとなしく言うことを聞くのですが、翌日になると同じことの繰り返し。
私も仕事と家事の両立で多忙を極めていますから、片づけにばかり時間を割くわけにいきません。そのうちイライラし、家族に当たったりもして、私自身の精神状態も悪くなりました。精神科医にあるまじきことですが…(笑)
「これはマズい」ということで、精神科医の視点に戻って、「そもそも片づけとは何か?」ということに真剣に向き合いました。そして、はっと気がついたんです。「そもそも日常生活を営むための部屋が、モデルルームみたいに完璧に片づいていたり、極端に物を減らしスッキリしすぎている必要なんてないんじゃないか」と。「健康を害さない清潔さがキープできていれば、OKじゃない?」と開き直ることができたんです(笑)このことがきっかけとなって、忙しくて物が多い我が家でも、そこそこキレイな状態を保つことができ、かつ短時間でササッとできる、そんなストレスの少ない片づけ術に到達したのです。
■完璧な片づけと「心の闇」
――この本の中では、完璧な片づけをする知人の話が出てきますね。
世に出ている片づけ本を読むと、「片づけができると運が上がる」「片づけができない人は心が乱れている」といったことがまことしやかに書かれていたりします。ですが、これは精神科医の目から見ると、根拠のない「決めつけ」に他なりません。
そこでその反証をするために、いくつかの例を挙げました。たとえば私が出会った中でも、片づけや掃除は完璧でも性格は「?」という人が何人かいました。意地悪で見栄っ張りだとか、自分の苦労話を延々して悲劇のヒロインになりたい人だとか、やたらクレームをつけたがる人だとか……。
完璧な片づけと相関関係があるのかどうかは一概には言えませんが、精神科医の立場から言うと、家の整理整頓やインテリアに極度にこだわりすぎる人の中には、心に満たされない深い闇を抱えていて、それを埋めるための行為として、「片づけ」や「家のデコレーション」に執着してしまう人がいるのではないでしょうか。
逆に部屋や車の中がぐちゃぐちゃでも、素晴らしい業績を上げている医師や、心がとても美しい女性を何人も知っています。そのことも書きました。
■5つの鉄則
――では、本書で奥田さんが提案されている片づけ術をいくつかご紹介ください。
たくさんあるのですが、くわしくは本書をお読みいただくとして、ここでは5つに絞り、鉄則としてご紹介しましょう。
1.床に直接物を置かない
ゴミやホコリは重力の関係で、床に一番多く溜まります。床に物が置かれていたり、散らばっていたりすると、その箇所は掃除がしにくいので、ハウスダストの元となるダニが発生しやすくなります。
我が家では、写真①のような丈夫で型くずれしにくいビニール製のカゴを、家族の人数分置いて、そこにそれぞれの持ち物を入れるようにしています。
すぐに動かせるので、掃除しやすいですし、別の部屋にも持って行きやすいですよ。
2.小型掃除機を各所に配置
掃除機を物入れなどにしまい込んでおくと、いざ掃除したい時に取り出すのが面倒なので、「後でやろう」ということにもなりがちです。
そこで我が家では、洗面所や廊下に小型掃除機を立てかけておいて、すぐに掃除ができるようにしています。
3.ゴミ箱を多めに配置
ゴミを拾った時、ゴミ箱が離れた場所にあると、そこまで持っていくのが結構めんどうなんですよね。座ってくつろいでいる時とか、特にそうですね。わざわざ立ち上がって捨てに行くのは億劫です。
我が家では、ゴミを見たら、すぐにポイ入れできるよう、各部屋ゴミ箱を多めに配置しています。
そうしてから、息子たちは、飲み終えたジュースの紙パックなどをすぐに捨てるようになりました。
4.リビングに背もたれイスを置く
外から帰ってきた子どもたちは、たいてい上着や靴下を床に脱ぎ散らかしますね。これでは、1の鉄則に反します。
そうならないよう、リビングに背もたれイスを置いて(写真②)、脱いだ上着などは必ずそこにかけさせるようにしています。これで、床はスッキリ。床に物が散らばってないと、部屋がほんとうに広く見えます。
5.「ところてん方式」で、1つ買ったら1つ捨てる
私は「断捨離」のように、まとめてドカッと捨てることはしませんし、そうする時間もありません。その代わり、服にしても本にしても靴にしても、1つ買って、収納スペースのキャパシティーを超えたら、ハミ出した中で要らない物を捨てるようにしています。これを名づけて「ところてん方式」。
常に収納スペースに余裕がない状態ですが、かえってそれが抑止力となって、ムダな買い物が減るんですね。お財布にも優しいので、ぜひお試しください。
――以上、ご紹介した5つの鉄則は、今日からすぐに実行できるものばかりです。
完璧な片づけとはいかないまでも、ササッとできて、そこそこキレイで、また精神衛生的にもいいことを保証します。
本書にはもっとたくさんの鉄則が載っています。片づけに悩んでいる方、是非お読みください!
奥田弘美(おくだひろみ)プロフィール
精神科医・産業医として都内20か所の企業にて、日々多数のビジネスパーソンの心身のトータルケアを行うほか、銀座スキンクリニックではカウンセリングルームを持ちメンタルケアコーチングやダイエットコーチングを実施。
著書に、『何をやっても痩せないのは脳の使い方をまちがえていたから』(扶桑社)、『女医が教える 働く男の怒りと疲れをパワーに変える処方箋』(メディカルトリビューン)、『ココロの毒がスーッと消える本』(講談社+α文庫)、『これならできる!魔法のスリム習慣』(太陽出版)などがある。現在FM世田谷にて、「愛はかげろう」のヒット曲がある元雅夢の三浦和人と「三浦和人とドクター弘美の心デトックス・ナイト」(毎週金曜日23:30~)でパーソナリティーも務める。
著者HP:http://medical-life.info/
奥田弘美著『精神科医が考えた 忙しすぎる人のための「開き直り」の片づけ術』
(光文社「美人時間」ブックス)
・価格:1,404円(税込)1,300円(税抜)
・発売日:2015年2月18日
・出版社:光文社
・サイズ:単行本
・ページ数:192p
・ISBNコード:978-4-433497810X
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