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近年、その品質の高さで注目を集めているのが、小豆島をはじめとする香川県産のオリーブオイル。香川県農業試験場小豆オリーブ研究所の窪田健康所長によると、その歴史が始まったのは明治40年ごろのこと。日露戦争を経て北の広大な漁場を得たことで、たとえばイワシをオイル漬けにしたオイルサーディンなど、魚介類の加工用にオリーブオイルが必要になったためだという。

 

「1年を通じて気候が温暖で台風の被害が少ないことが、オリーブの栽培に適していたのでしょう。国から栽培試験地として選ばれた香川、鹿児島、三重のなかで唯一、生産に成功したのが、ここ香川県の小豆島でした。以来、食品加工のほか、化粧品などにも盛んに利用されていましたが、昭和34年に輸入が自由化されると、海外産の安価なオリーブオイルが大量に入ってきて、残念ながら需要が減少。以降はおもに観光的な資源として、細々と栽培が続けられている状況でした」

 

変化が訪れたのは、平成。バブル期にいわゆる“イタめし”ブームが起こり、食生活が変化していくなかでオリーブオイルが一般的になり、家庭の食卓にも浸透。食用オリーブオイルの需要が急速に高まって、再びオリーブの栽培にも力が注がれるようになった。

 

「平成15年に小豆島がオリーブ振興特区に認定されたことも契機になりましたが、研究者魂とでもいいますか、所員が折に触れて世界じゅうの産地を訪れ、研究を続けていました。上質なオリーブオイルをつくるには、栽培技術はもちろん、採油技術も重要です。その両面の育成に力を入れ、さらに世界では当たり前だった、人間の『鼻・舌・のど』の感覚によってオリーブオイルを評価する『官能評価』も取り入れました。歴史が浅いぶん、伝統にとらわれすぎることなく、国際基準の最高品質を自由に目指すことができたのがよかったのかな、と思います」

 

その結果、オリーブオイルは権威ある国際コンテストでも次々と入賞するまでに。また、栽培は小豆島だけでなく県全体に広がり、現在、その国内シェアは90%以上を占める。国産のオリーブオイルには大きな特徴があるようだ。

 

「世界の産地に比べると個々の栽培面積がせまく、傾斜地も多いので、必然的に手摘みが主体になります。オリーブオイルには実が健全なことと鮮度が命ですが、もともと日本では集約的な農業が一般的で、そのぶん手をかけることもでき、小回りも利く。上質なオイルを生み出す環境があったともいえます。さらに、日本には梅雨がある影響で、実の水分量が多い。そのため甘くマイルドで、透明感のある味わいに仕上がり、繊細な和食にもよく合うというわけです」

 

洋食に限らず、和食にもひと回しかけるのが地元の定番。オリーブオイルでおいしくなる“日常ごはん”を、オリーブオイル生産者と県庁の担当者に教えてもらった。

 

【オリーブ豆乳鍋】

 

「鍋の仕上げに適量を回しかけると、オリーブオイルの風味によって、野菜がまるで生野菜みたいにフレッシュに感じられるんです。最近、特にはまっているのが豆乳鍋。豆乳独特のくさみが消えて、濃厚でクリーミーな鍋になります。具材は選ばず、お好みで。鍋に限らず、わが家ではみそ汁、かす汁など、汁ものにかけるのも定番です」(三豊オリーブ・宮武孝季さん)

 

【炊き込みオリーブごはん】

 

「米2合に対して、種をとったオリーブ漬け50g、オリーブオイル大さじ1を目安に加えて炊きます。仕上げに黒こしょうと、さらにオイルをかけても。冷めても炒めてもおいしいごはんになります。地元でオリーブ漬けといえば『新漬け』。秋の収穫後すぐに渋抜きし、塩漬けにしたもので、そのフレッシュな味は、ぜひみなさんにも試してほしいですね」(空井農園・空井和夫さん)

 

【オリーブ納豆】

 

「納豆にオリーブオイルを混ぜると、特有のくさみが消えて食感もふわふわに。これにヨーグルト、目にいいとされるブルーベリーを加えるのが、朝食の定番です。そのおかげかどうか、70歳を過ぎた今も元気。思えば、子どものころのおやつは、丼いっぱいのオリーブの実で、これさえあれば病気にならないと言われて育ちました。オリーブは私の健康の源ですね」(空井農園・空井和夫さん)

 

【オリーブおぼろ豆腐】

 

「オリーブオイルは冷ややっこにかけてもおいしいですが、最近よくやるのがおぼろ豆腐。豆腐を電子レンジ(600W)で2分ほど加熱し、仕上げにしょうゆ、または塩と、オリーブオイル各適量をかけます。胃にやさしくて、疲れているときでもするっといただくことができます。そのまま食べることが多いですが、パンや野菜につけてもいいですよ」(香川県交流推進部・亀井裕美子さん)

 

健康な毎日を送るためにも、オリーブオイル和食を試してみよう。

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